ペットの数が子供を上回る中、新たな展開をみせるペットビジネス

2014年03月30日 19:17

 一般社団法人ペットフード協会が発表した「2013年度全国犬・猫飼育実態調査」によると、2013年度の日本のペット飼育世帯率は、犬は15.8パーセント、また猫は10.1パーセントとなっており、犬猫を合わせた飼育数は2,061万5千匹に達することが分かった。これは、総務省統計局データ(2013年8月1日現在)による15歳未満の子どもの総数1,643万6千人)を大きく上回る数だ。また、ペットの頭数自体は、ここ数年横ばいで推移しているものの、ペットビジネスのマーケットは拡大を続けている。総合マーケティングの総合プランニングが2012年に発行した「ペットビジネス市場の現状と将来展望」によると、2011年度の時点で3,660億8,000万円の規模を持つペット関連製品市場は、2014年度には3,869億円にまで拡大すると予測されている。

 一昔前は、犬を飼うといえば番犬目的の場合も多かったが、ペットの小型化、室内飼育化により、番犬というよりも癒しや安らぎを求めて買う人が増え、それまで以上に家族の一員としての認識が強くなっている。猫の方も、以前に比べて自由に街中を散歩する姿はめっきりと減り、室内限定で飼われるケースが多くなっている。それに伴い、ペットの長寿命化、肥満化が進んだことで、ペットの健康志向も高まり、ペットビジネス市場は世界的に巨大なマーケットに成長し続けているのだ。東京都生活文化局が以前に行った調査によると、犬1匹あたり、えさ代、病院代、予防注射代、美容室代などを合わせて平均で年13万円程度の支出になるという。

 ペットの位置付けが代わり、家族の中での地位が向上したことで、ビジネスチャンスも拡大している。これまでは、ペット関連業者だけのマーケットであったものが、他の領域にまで拡がりをみせているのだ。

 例えば、住宅関連では大手住宅メーカーのパナホーム<1924>などが、ペットとの暮らし提案に積極的に取り組んでいることで知られている。同社では2002年より、内閣府認定の公益社団法人「JAHA」の賛助会員として、賃貸集合住宅において、ペットとのくらしに必要な空間や設備について提案を行っているが、そのノウハウを活かして今年4月からは、ペットと心地よく共生する空間とくらしのサポート「with pet(ウィズ ペット)」を戸建住宅全商品に向けて展開していくと発表している。具体的には、ペットの安全配慮のための間取りや、ペット用のトイレや収納などをひとまとめにしたペット専用スペース「ペットピット」、滑りにくい床「アトムPS」、さらに飼育上の悩みの種であるニオイ対策として「天井埋込形ナノイー発生機」や「消臭クロス」など、ペット共生に対応する設備や内装建材の提案を行っていく。犬や猫を家族と考える人でも、全てが人と同じというわけにはいかない。お互いが快適に共存共生するためにも、このように間取りや設備は充分に配慮すべきだろう。また、同社では「with pet」の開始に合わせてアニコム損害保険株式会社<8715>と代理店委託契約を締結し、4月1日より、同社のペット保険「どうぶつ健保ふぁみりぃ」の販売も開始する。

 住宅業界は4月からの消費増税、さらには来年に控えた10パーセントへの消費税率の引き上げにより、価格だけに依存しない付加価値の高い商品が求められている。スマートハウスや太陽光発電などの話題が多いが、ペットという視点も住む人にとっては大きな関心ごとであり、ペットの数が子供を上回る少子高齢化社会の中、高付加価値の住宅として、ますますビジネスチャンスが拡がるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)