飼い猫に噛まれると、場合によっては入院や手術が必要なほどの深刻な感染症を引き起こすという研究が2月、発表された。
手に関する外科手術を中心に扱う『Journal of Hand Surgery』に2月掲載された論文。調査は、3年間で過去に手を猫に噛まれたことがあると答えた193人を対象として行われた。咬傷を受けた患者のうち30%にあたる57名が病院に訪れた。平均入院期間は3.2日。入院患者のうち67%にあたる38名は患部洗浄と損傷部分の除去を受け、うち8名は一度以上の手術を必要とした。入院のリスクファクターとして、喫煙、易感染状態、噛まれた場所があげられた。また、噛まれた際に患部に発赤と腫脹が見られる場合は入院のリスクが増加する。噛まれてからの時間、白血球数、赤血球沈降速度および炎症反応の有無と入院には関連が見られなかった。
治療には静脈内への抗生剤点滴や手術が必要となることがある。また損傷を受けた部位も関係があるとし、特に関節や腱部分が傷害された場合、発赤や痛み、腫脹をよりもたらしやすいとしている。論文は、深刻な感染症が考えられる場合、手を専門とする外科医の緊急診察が必要とまとめている。
実際に、ペットによる咬傷のトラブルは少なくない。横浜市衛生研究所は、近年犬や猫からの咬傷によるパスツレラ症の感染発生が増えていると報告している。パスツレラ症はパスツレラ菌による感染症。パスツレラ菌は、猫はほぼ100%、犬は約75%が持っており、咬まれるあるいは引っ掻かれるなどして、ペットからヒトへ感染するという。
パスツレラ菌に感染した場合には、数時間で受傷部位が赤く腫れ、痛みや発熱、ときにリンパ節の腫れも伴う。受傷部位の炎症は皮下組織の中を広がり、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ばれる状態になることがある。関節に近い場合には、関節炎を起こすことがあり、骨に達するような傷であれば骨髄炎を引き起こすことも。免疫機能が低下している人であれば、重症化して敗血症や骨髄炎を起こし死亡することもあるというから注意が必要だ。同研究所によれば、猫による咬傷の場合、受傷部位は、手が63%と最も多く、肩・腕が23%、ついで足・脚が12%とのこと。
また、前足をなめる猫の場合には、口の中の細菌を爪に付着させることにもなるので、猫に引っ掻かれないように注意が必要だとのこと。さらに、寝室にはペットを入れない、一緒に寝ない、キスをしない、口移しで餌をあげないよう注意喚起をしている。
愛猫が唯一無二の存在である飼い主たちにとって安易に接触できないというのは、なんとも悩ましい話である。(編集担当:堺不二子)