資金面のハードルの高さや開発環境、企業マインドなど複数の要因から、日本におけるベンチャー企業の育成は難しいといわれている。一方でベンチャー企業が経済成長の重要な役割を担っているとの認識は広まっており、政府によるベンチャー支援も始まっている。支援活動では各大学による取り組みが数年前から活発化しており、政府の取り組みより一歩も二歩もリードしているといえそうだ。
社長の出身校第2位(東京商工リサーチ調べ)の慶應義塾大学では、同学の知的財産をスタートアップ企業に供与することにより、大学としてベンチャー創造への支援を行う活動を行っているほか、最近では複数のベンチャーキャピタルと連携し、大学発ベンチャー設立の支援も展開している。
また、慶應義塾大学の知的財産をもとに企業を設立する場合に、慶應義塾が最大100万円を出資するというユニークな「アントレプレナー支援資金規定」も設けている。同学の知財を基に創出したベンチャー企業には、ここ数年をみても医療機器の開発、製造・販売のライセンスを行うアライ・メッドフォン研究所、電気自動車の開発を手掛ける株式会社SIM-Drive、味覚に関するコンサルティングを行うAISSY株式会社など十社以上を数える。
社長の出身校数で慶應義塾に続く早稲田大学では、早稲田大学インキュベーション推進室を設置し、同学の教職員および学生を対象に、起業支援を積極的に行っている。具体的にはインキュベーション施設「早稲田大学インキュベーションセンター」におけるオフィス貸与をはじめ、専門家による経営相談の受付などのサービスを行う。
さらに今年4月には早稲田大学先端ベンチャー・起業家研究所(WAVE)を設置し、①成功事例に基づく起業家の支援・育成にかかる各種プログラムの開発・評価、②イノベーションの期待される技術シーズの事業化にかかる多角的な検証――など取り組みの成果を活用する。
また株式会社ディー・エヌ・エーと共同で、2014年度秋季に提携講座「ベンチャー起業家型リーダー養成講座」を開設。学生起業家による成功事例を増やすことと、企業などにおいて新事業創出を推進できるリーダーの育成を目指す。
この講座の特徴は、講義の最終回で学生によるビジネスモデルの立案・発表をコンテスト形式で実施し、優秀者には、WAVEによって、事業化支援のインセンティブが提供されることだ。
総務省の調査によれば、人口における起業家割合はアメリカの8~10%に対して日本が3~4%。失敗を恐れて躊躇する割合も日本で53%、アメリカ32%と大きく異なっている。多くの起業家の著書を読むと、一度で成功することは稀でほとんどの起業家が失敗を経験している。起業家精神というのは一朝一夕には育たないものとは思うが、失敗を恐れないチャレンジ精神だけは、もう少し日本人も見習っていいのかもしれない。(編集担当:横井楓)