いつの時代も、新たなビジネスチャンスを見つけて成功する人はいる。一体、起業で成功する人とそうでない人の違いはどこにあるのか。経済産業研究所の松田尚子氏と松尾豊東大准教授が統計データを用いて分析したところ、その属性が明らかになった(「起業家の成功要因に関する実証分析」)。
同研究によれば、「働いてきた年数」と「修士号以上の学位」は、起業の成功にマイナスの影響を及ぼすという。一方「管理者としての経験年数」は、起業の成功にプラスの影響を与えていた。
経営者にとって有利になりそうな「MBA資格」については、起業のチャンスを発見することには役立つものの、実際に起業するかどうかや、利益への影響はなかった。さらに「投資家の経験」は、起業チャンスの発見と実行には役立つが、利益を上げるにはむしろマイナスの影響があることも判明した。ビジネスチャンスを見つけ出す能力と、その事業を継続させるための能力は異なるということだろう。
また起業のチャンスを見つける段階では、友人と家族に起業家や経営者がいることが共にプラスの影響を与えているが、実際に起業を実行するのに役立っているのは家族だけであることも分かった。ところが逆に、起業した後の成功には家族に経営者がいることは関係がなく、友人に起業家や経営者がいることだけがプラスの影響を与えている。つまり、親や親族が会社を経営していれば起業を実行できる確率は高いが、起業家や経営者の友人を作ることで、その後の成功確率を上げることができるのだ。
さらに成功した起業家はそうでない起業家と比べ、経営に関する相談相手を合理的に選んでいることも分かった。彼らは豊富な情報を得るため、友人よりも「人脈の広い起業家や前職の同僚・上司」に経営上の相談をする傾向にあったという。
経営者によるビジネス書には「成功のコツ」を説くものが多いが、著者の体験談がメインで統計的なデータに基づくものは少ない。今回の調査が示す「成功する起業家の属性」は、これから新規事業を始める人にとっても参考になるかもしれない。
対象は、ネット調査で抽出した7023人。そのうち実際に起業した人は1501人で、起業した年齢は平均34.8歳、調査時の平均年齢は46.2歳だった。起業した1501人のうち、実際に利益を出したのは962人。起業した1501人のうち、116人はその後再び就業していた。(編集担当:北条かや)