高齢化の恩恵を受け、じりじりと市場を拡大している業界がある。育毛剤メーカーやクリニックなどのヘアケア産業だ。矢野経済研究所の試算によると、13年度のヘアケア市場(事業者売上高ベース)は前年度比100.2%の4323億円。3年連続の成長で、今後も拡大が見込まれる。
市場シェアは小さいが、近年伸びが著しいのは「植毛」だ。高齢化で薄毛を気にする男性が増加し、13年度は前年度比110.6%の36億円を突破する勢い。ニーズを見込んだ大手植毛専門クリニックが、積極的なプロモーションを展開している。
高齢でなくとも頭頂部の髪がだんだん薄くなる「AGA(男性型脱毛症)」は、1200万人が該当すると言われる。こちらは投薬治療が広く知られるようになり、皮膚科や美容クリニックが「患者」を奪い合う構図になっているようだ。今後は若年層も含めたニーズの掘り起こしが加速するだろう。
かつらや増毛サービスも好調だ。市場は前年度比101.1%の1375億円を見込む。薄毛を気にする中高年女性が増え、「女性用かつら」の市場が拡大している。高齢化の恩恵に甘んじることなく、市場の成熟を見越してアジア進出を目論む大手業者も多い。
「発毛・育毛剤」関連も、前年度比100.9%の650億円と堅調だ。中高年男性を中心に売上が伸びているが、今後は女性や若者向けの商品も開発されていくとみられる。
好調な「育毛・増毛」市場とは対照的に、最大のシェアを誇る「ヘアケア剤」(シャンプー、リンスなど)はやや低調。13年度は前年度比 99.3%の2262億円にとどまった。ただ、ノンシリコン系の商品や、加齢に対応する「地肌ケア」「スカルプケア」をうたった商品は好調。アンチエイジングブームの影響は底堅い。
ヘアサロンや理髪店の多くが客離れに悩む一方、高齢化で「薄毛」に悩む人が増え、育毛市場は好調である。矢野経済研究所では、14年度も引き続き100.3%の成長を見込む。(編集担当:北条かや)