矢野経済研究所の発表によると、2012年度の国内化粧品市場規模は、2兆2900億円(ブランドメーカー出荷金額ベース)で、前年度比100.8%と、わずかながら成長を維持した。成熟市場である日本国内では、限られたシェアをめぐりメーカーの競争が激化している。
化粧品市場の中でも半数近くを占める「スキンケア」市場は、前年度比101.1%の1兆596億円だった。2~3年前からトレンドとなっている「時短」コスメが全体を牽引し、前年度実績を上回った。
時短コスメとは、化粧水、乳液、美容液などさまざまな機能を兼ね備えた化粧品のこと。「洗顔のあとこれ1つでOK」をうたった「オールインワンジェル」や、韓流ブームの中で定着した「BBクリーム(美容液+ファンデーション)」などがその一例だ。この夏には資生堂が、メイク前に化粧下地として塗っておけば、洗顔時にお湯だけでメイクが落とせるという「フルメイクウォッシャブルベース」(35g/1050円)を発売し、話題となった。
大手口コミサイト、アットコスメの「オールインワン化粧品」カテゴリーには1400件近い化粧品が登録されており、注目しているユーザー数は30万人を超える。時短コスメは忙しい現代女性の心を掴んでいるようだ。価格もリーズナブルで1000円前後のものが多く、様々なメーカーが参入している。今年に入ってからはシャネルが「CCクリーム」(30ml/6615円)を発売するなど、高価格帯の商品も続々と登場。今後も競争の激化が見込まれる。
国内の化粧品市場は、ここ5年間、2兆円超を維持している。ファッション市場がリーマン・ショック後に10兆円から8兆円まで落ち込んだのとは対照的だ。総務省統計局の「家計調査」をみても、2人以上の世帯における1年間の化粧品支出金額は、ここ10年間でほぼ変わっていない。一方で、洋服にかけるお金は減っている。多くの消費者は、収入が減って洋服を買うのを我慢しても、スキンケアやヘアケア、メイクアップにかける支出は減らさないのかもしれない。(編集担当:北条かや)