先月、文部科学省及び国際バカロレア機構(インターナショナルスクールの卒業生が国際的な大学を受験する際に必要となる国際バカロレア資格の認定機関)は、高等教育課程(ディプロマ・プログラム:DP)において、日本語でも実施可能な科目として、新たに数学及び物理を追加することについて合意したと発表した。
同省は、今後各学校の実情等に応じたDPの導入が更に可能となり、国内における国際バカロレア資格(IB)の普及拡大につながることが期待されるとしている。この動きは、昨年6月に閣議決定された、「日本再興戦略 JAPAN is BACK」に基づく動き。文部科学省は、現在DPに準拠している19校を2018年までに200校を目指すとしている。このバカロレア・プログラムは、学生の柔軟な知性の育成と、国際理解教育の促進を目的とし教科を超えて一つのトピックに対して様々な視点で探求し、取り組むというもの。
それぞれ、Thinkers(考察する人)、Risk takers(挑戦する人),Inquirers(探求する人)など、10カテゴリーに分けられ、このプログラムを効果的に吸収できるような動機づけがされている。
教育の現場では、英語の授業の重要性と早期教育が叫ばれて久しい。すでに小学校から英語の授業が始まっているのは周知の事実である。そのような中で、政府が掲げる「JAPAN is BACK」の旗印のもとDPの認定校を増加させるという流れは、英語という切り口で考えると確かに正しいのかもしれない。しかし、初等教育課程(PYP)、中等教育課程(MYP)や高等教育課程(DP)のすべてにおいて認定校となっている学校は、日本にはわずか3校である。真の「JAPAN is BACK」を目指すのであれば、単なる国際的な大学進学のためのシステムではなく、PYPからDPまで全てにおいて国際標準となるような教育体制が今後必要になってくる。
一方、英語を理解している人がビジネスの現場には多くいるが、英語が話せるだけでは、国際的に認められるビジネスパーソンを創りだすことは不可能であり、日本から国際的なビジネスパーソンはあまり輩出されていないのも事実である。相手の立場や状況、文化、考え方などすべてを理解して初めて国際的な見地に立って渡り合えるのではないだろうか。沈黙は金なりではなく、相手の考え方を尊重し理解したうえで自分たちの立場をしっかりと発言できる国際的なビジネスパーソンの育成が望まれる。今後に期待したい。(編集担当:久保田雄城)