2014年3月頃から、ゼンショーホールディングス〈7550〉が運営する大手牛丼チェーン「すき家」のアルバイト従業員不足による一時閉店が話題となってきた。深夜や繁忙時間の1人勤務を始めとした無茶なオペレーションと労働環境に、アルバイト側が見切りをつけた格好だ。企業側はこれに対し、急遽時給アップを行い人員の流出を食い止めようとしたが結果は芳しくないようだ。それどころか、5月29日にはアルバイト同士がSNS上で一斉欠勤を呼びかける「肉の日スト」という動きまで起こった。スト自体は不発に終わったものの、雇用者側とアルバイト側の軋轢はまだ収まっていない。
同様の人材流出を懸念し、飲食業界全体で時給アップの動きが続いているが、人手の確保には結びついていないという。そんな中、人材サービス各社は、求職者の側に立った新しいアルバイト採用支援サービスを開始している。
ジョブセンスなど人材派遣を扱うリブセンス〈6054〉は、登録した求職者に電話で詳しい条件を聞き、細部までマッチするアルバイト先を紹介。またリクルートジョブズは、企業側に採用面接の基準などのアドバイスを行う助言要員をここ1年半で5倍に増員したという。これまでは企業側本位だった人材確保の流れが、求職者側に寄り添ったものに変化しつつあると言えるだろう。
アルバイト採用支援サービスの変化からも分かるように、若い世代には、目先の時給以上に働く環境を重視している人が多い。一部の上の世代からは甘えに映るかもしれないが、そう感じる人ほど、なぜ彼らが環境を重視するのか考えてみてほしい。若い世代の根本には、「頑張った分だけ成長があるなんて信じられない」という現在の経済システムへの不信と諦観があるのではないだろうか。
十数年前までは、たとえ過酷な環境で働いていても車、家、平凡でも幸せな家庭など、「頑張った分得られるもの」のロールモデルが明確だった。しかし今の若い世代にはこのロールモデルが存在しない。また、自分の仕事がスキルアップや社会貢献につながると感じられる機会も減っているのだろう。そうした未来への希望が持てない状況だからこそ、彼らは現在の環境を重視するのではないだろうか。
単純に時給を上げるだけではなく、給与以外の魅力ある付加価値をどれだけ具体的に提示できるかが、これからの人材確保では必要になってくるだろう。そう考え福利厚生などに力を入れている企業も多いが、まずはそうした改革を末端のアルバイトにまで行き届くようにすることが大切だ。
就職活動などで辞めてしまう学生アルバイトも多いと思うが、その時に彼らが自然と就職先候補にアルバイト先の企業を考えてくれるにはどうしたら良いか。企業側がそうした想像力を働かせることが、その会社独自の付加価値を見つけ出すヒントになるのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)