大学進学率が50%を超えた今、一部で「学生と大学、学部のミスマッチ」が問題となっている。朝日新聞と河合塾が11年から実施している調査によれば、大学生の退学率は8.1%。中退した学生たちの「その後」は厳しい。労働政策研究・研修機構の「第3回若者のワークスタイル調査」(12年)によると、大学(高等教育)を中退した後、正社員となる若者はわずか7.5%。アルバイトや契約社員などの非正規雇用が7割を占め、6人に1人は無職だ。
せっかく入った大学を、なぜ退学してしまうのか。ベネッセ教育総合研究所のレポート「大学生の中退防止に向けて」では、合格偏差値帯ごとに「退学意向」の割合を算出している。どの偏差値帯の大学でも、入学時点で3~6%の学生が「退学意向とてもあり」と答えており、偏差値と退学意向に強い相関があるとはいえないようだ。
学部系統別では、「社会科学」の学生で特に退学意向が高い。社会科学系統は「専門への興味ではなく、大学進学そのものが進学の目的の学生が比較的多い」ために、退学意向が強まると見られている。
退学意向には、「大学志望度」よりも「学部志望度」の低さが関係しているようだ。レポートでは、学ぶ目的が明確で入りたい「学部」があったのに、不本意に別の学部へ入学した学生ほど退学意向が強まる傾向があると判明した。
入試方式との関係をみると、「センター利用入試」、次いで「一般入試」の合格者で退学意向が高い。よく問題視される推薦・AO入試での合格者は、入学時点で志望動機や学びたいことが明確な学生が多く、退学意向は低かった。
レポートではこれらの結果から、入学してすぐ転部や退学を考える学生には、(1)進学そのものが目的など「学ぶ目的が明確でない」タイプ、(2)「学ぶ目的は明確だが、学部が第2志望以下など不本意に入学したタイプ」の2つの類型があると分析。多様なルートや動機で入学してくる学生をいかにフォローするかが、改めて問われている。(編集担当:北条かや)