森下仁丹<4524>が、胃では溶けず腸まで届くカプセル技術を用いて、経口タイプのワクチンを研究し、日本とアメリカで特許を取得するに至った。研究は神戸大学大学院医学研究科感染症センターの白川利朗准教授と共同で行われ、将来的には注射に代わるものとして製品化し、世界で販売することを目指している。
同社が独自に開発したのは「耐酸性シームレスカプセル」というもの。一般的に普及しているハードカプセルやソフトカプセルは、ゼラチンを原料とするカプセルの中に粉末や液体の内容物を充填するという製法だ。一方、シームレスカプセルは、滴下法という滴下型製法により、型を使わないで内容物と皮膜を同時に形成する。その独特の製法により、髪の毛の直径3分の1という薄い皮膜のカプセルを作ることも可能だ。また、硬い錠剤から魚の卵のような柔らかいカプセルまで、硬度を自在に設定することもできる。耐熱性、耐酸性、耐凍性、腸溶性などにも優れているため、目的や用途の幅は限りなく広い。さらに、これまでの一般的なカプセル技術では5ミリ以下のサイズのものを製造することは難しかったが、同社は0.5ミリという極小サイズを可能にしている。
このシームレスカプセルの技術を用いて、経口ワクチンの普及が実現するかもしれない。今回、森下仁丹が発表したのは、滴下法で作る腸溶性シームレスカプセル化技術で、感染症の原因となるウイルスや細菌のタンパク質を、ビフィズス菌の内部やその表面に発現させ、これをワクチンとして内服するというものだ。胃酸に弱いビフィズス菌だが、シームレスカプセルの耐酸性に包まれることにより、腸までワクチンが届けられるため、高い効果が期待されるらしい。経口ワクチン技術は、感染症予防だけではなく、慢性C型肝炎などの治療用ワクチンとしても利用することができるそうだ。現在、感染症の予防には注射が多く用いられているが、経口ワクチンの普及が実現されれば、より容易に感染症対策が進められるだろう。注射に比べて、輸送や管理にも便利であるため、コストを安価に抑えられることが予想され、貧困国にも安全なワクチンを多く提供することができるようになるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)