閣議決定は暴挙だ 民・共・社民ら野党猛反発

2014年07月01日 20:38

 集団的自衛権の行使容認へ政府が1日、閣議決定した。国家の安全保障、特に憲法に直接かかわる重要事案を政府・与党協議のみの密室で取決めた安倍総理の一連の手法に野党はじめ国会外でも暴挙だと批判が相次いで出ている。

 戦後、70年の歴史で歴代政府が「集団的自衛権は有するが現行憲法の下では行使は認められない」として、平和外交、専守防衛、他国の戦争に巻き込まれることもないよう舵取りをしてきた中で、今回の閣議決定は、戦後の安全保障の在り方を大きく変える「海外での武力行使」の危険を政府自らが作り出したものといえよう。

 野党第1党・民主党の海江田万里代表は「国会議論もせず、与党の密室の議論のみで、これまでのわが国の安全保障の政策を真正面から変更する、これまでの憲法解釈を真正面から否定し、変更する決定を行うことは当然容認できない」と強く批判。

 海江田代表は「閣議決定で、武力行使の新たな3要件に基づき『日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、必要最小限度の実力を行使するのは自衛の措置として憲法上許容されると判断するに至った』と、従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認しようとしていることに対しては、たたき台となった1972年の政府見解で自衛権行使が認められるのは『国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される急迫、不正の事態』とし、それ以外は集団的自衛権であり、行使できないという結論に至っている。その3つの条件から『集団的自衛権が行使できる』という結論に持ってくるのにはかなり大きな無理があり、論理的整合性を欠く」と政府に対峙していく考えをより鮮明にした。

 日本共産党の志位和夫委員長は「従来の政府見解を180度転換し、海外で戦争する国への道を開くものになっている」と警鐘を鳴らした。そして「与党の密室協議を通じて、一片の閣議決定で強行するなどというのは立憲主義を根底から否定するもので歴史的暴挙」と抗議の姿勢を示した。

 そのうえで、志位委員長は「閣議決定は、海外で戦争する国づくりを、2つの道で推し進めるものとなっている。第1は『国際社会の平和と安定への一層の貢献」という名目でアフガニスタン報復戦争やイラク侵略戦争のような戦争を米国が引き起こした際に、従来の海外派兵法に明記されていた『武力行使をしてはならない』、『戦闘地域にいってはならない』という歯止めを外し、自衛隊を戦地に派兵するということである。閣議決定は自衛隊が活動する地域を後方地域、非戦闘地域に限定するという従来の枠組みを廃止し、これまで戦闘地域とされてきた場所であっても、支援活動ができるとしている。それが何をもたらすかはアフガン戦争に集団的自衛権を行使して参戦したNATO諸国がおびただしい犠牲者を出したことに示されている』と提起。

 第2については「日本に対する武力攻撃がなくても、『我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合』には武力の行使=集団的自衛権の行使ができるとしている。

 これについて「閣議決定」は、「従来の政府見解における基本的な論理の枠内で導いた論理的帰結」というが、従来の政府見解の基本的な論理の枠内どころか、それを土台から覆す、乱暴きわまる解釈改憲であることは明瞭」と批判。

 志位委員長は「集団的自衛権を名目とした武力行使も、集団安全保障を名目にした武力行使も、ともに許容されるとなれば、憲法9条が禁止するものは何もなくなってしまう。それは戦争の放棄、戦力不保持、交戦権否認をうたった憲法9条を幾重にも踏みにじり、それを事実上削除するに等しい暴挙」と政府の強引ともいえる「事実上の改憲」を批判した。

 社民党の吉田忠智党首は野党合同の緊急街頭演説で「国民に信を問うべき課題を、与党で密室協議して閣議決定した。皆さんとともに怒りを強く発したい。集団的自衛権の行使はできないということを自民党政権の下でも長い間維持してきた。それを一内閣の判断で変更する。まさに立憲主義を根本的に否定するものだ」と怒りは収まらない様子だった。

 吉田党首は「かつて、ベトナム戦争でも集団的自衛権の行使が認められていなかったから、日本は求められても戦争をしなかった。イラクに派遣されても武力行使はしなかった。それが歯止めになってきた。韓国はアメリカの求めに応じてベトナム戦争に派兵し、5000人の兵士が亡くなった。1万人の兵士が負傷した。2万人の兵士が韓国帰国後、枯葉剤の後遺症に苦しんだ。これが集団的自衛権の行使だ」と海外の戦争に巻き込まれる危険を訴え、国会で「海外で武力行使を行わないという歯止めをかけるのが各政党、国会議員の仕事だ」と国会での戦いを誓った。(編集担当:森高龍二)