増え続ける認知症患者 20年には325万人も 求められる家族の理解

2014年07月10日 10:01

 警察庁の調べによると、認知症が原因で行方不明となった人の数が1万人を超えたことがわかるなど、高齢化の進展とともに認知症患者の数が右肩上がりに増えている。2010年時点での認知症患者数は200万人程度と推定されるが、高齢化が進む20年には325万人にまで膨れ上がるとの試算もある。多くの認知症患者を抱える老人ホームでは音楽療法など様々なケアを取り入れているが、大切なのは家族が症状を理解した上で、認知症であることをきちんと受け入れることだ。

 認知症の最大の危険因子は加齢で、65~69歳で認知症になる割合は1.5%だが、以後5歳ごと倍に増加し、85歳では27%に達する。厚生労働省によれば10年時点で、我が国の65歳以上の高齢者における有病率は8~10%程度と推定されており、数にして200万人程度の計算だ。専門家の間では、すでに65歳以上人口の10%(242万人程度)に達しているという意見もある上に、今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、20年には325万人まで増加するとされている。

 高齢者向けの介護施設紹介事業を行う「あいらいふ入居相談室」が全国の有料老人ホーム73施設を対象に調べたところによると、入居時に認知症を発症している人の割合は、「5割以上8割未満」が最も多く51%を占めていた。

 一方で、増え続ける認知症患者に対し、施設が十分な専門知識や設備を持って対応できるわけではない。同じくあいらいふの調査によると、「認知症専用フロア」や個別ケアを実現するための「ユニットケア」を設けている施設は35%に留まる。65%の施設では認知症対応のための専用設備などは設けていなかった。

 また認知症ケアの有資格者を配置しているのも34%に留まり、専用設備を設けている割合とほぼ同じ。有資格者の内訳は、「認知症ケア専門士」が22%、「認知症ケア指導管理士」3%、「認知症ケア上級専門士」1%、「その他」8%となっていた。

 各施設が力を入れている認知症ケアは「音楽療法」が最多で、半数の施設が力を入れていた。次いで「園芸療法」「アートセラピー」「アニマルセラピー」「回想法」などへの取り組みが見られた。

 家族に協力してほしいことは「症状の理解」「面会に来る」「認知症であることの受け入れ」で、いずれも3割前後を占めた。

 認知症を発症する最大の要因が加齢であるなら、高齢化に向けて我々は認知症と正面から向き合うことを避けられないだろう。現段階では認知症の治療薬とは、アルツハイマー病に対するものしか存在せず、脳血管性認知症自体を対象にする薬剤はない。だからこそ、施設による専門的なケア、さらには身内による心のこもった精神面からのサポートが欠かせないだろう。(編集担当:横井楓)