国立循環器病研究センターは、脳梗塞再発予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」が認知症の進行予防にも有効であることを2014年2月27日に発表した。
厚生労働省は、12年度の認知症高齢者患者数は305万人と推計し、65歳以上の人口に約10%に達すると発表している。そして、従来の予想を上回るペースで増加し、現時点ですでに400万人を超えているとも言われている。
現在、認知症の治療は、進行を抑制するだけで、認知機能の低下そのものを根本的に食い止める手法はまだ見つかっていない。しかし、認知症を早期に発見し、早期治療することで発症を大幅に遅らせることが可能であり、早期発見の重要性とともに早期症状により効果的な治療法が求められている。
今回、アルツハイマー病をはじめとする認知症患者には、その原因にかかわらず、しばしば血管の病気を併発することが知られていることから、脳梗塞の予防に広く用いられる抗血小板薬(血液サラサラ効果のある薬)であるシロスタゾールが認知症を抑える効果があると予想して研究が行われた。
シロスタゾールを内服していた認知症患者では、特に記憶の再生や自分の置かれている状況を正確に把握する能力(見当識)の低下が阻止された。これらの機能は特にアルツハイマー病の早期に起こりやすい障害であることから研究グループは、シロスタゾールがアルツハイマー病のような神経変性症にも有効である可能性があると考えている。
今後、これらのデータを基に、国立循環器病研究センターを中心として今年中に医師主導治験を開始し、シロスタゾールの軽度認知障害(MCI)の患者に対する有効性を確認する予定という。
いくら治療法が開発されても早期治療が行われないと効果が得られない。認知症患者自身は初期の段階では症状を隠すこともある。そして、認知症は本人の問題よりも、家族のQOLを大幅に悪化させることから、家族が注意深く認知症の初期症状を知って観察する必要がある。認知症は単に物忘れの悪化だけではないので、その知識を知っておくことは重要である。初期症状の内に治療することで、症状の進行を大幅に遅らせて家族の負担も大幅に軽減できる。(編集担当:阪木朱玲)