着々と拓ける再生医療の道 京大とカネカがiPS細胞自動培養装置を共同開発へ

2014年05月13日 11:54

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は皮膚細胞などの体細胞に遺伝子などを導入し、細胞核を初期化することにより作製でき、胚性幹細胞(ES細胞)のように無限に増え続ける能力と体のあらゆる組織細胞に分化する能力を有する多能性幹細胞だ。

 受精卵を利用して作られるES細胞と違い、倫理的問題を回避できる。また、 患者から採取した体細胞からiPS細胞を樹立し、目的の細胞に分化誘導することにより、疾患特異的な表現型を示す疾患モデルを構築することも可能であると考えられている。今回、このiPS細胞を自動培養する装置の開発がスタートした。

 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)とカネカ<4118>は、iPS細胞を用いて創薬スクリーニングを行なうための自動培養装置の開発を目指し、共同研究契約を4月24日に締結した。

 この共同研究では、カネカは京都大学CiRAとともに、iPS細胞由来の細胞を用いた治療薬シーズの探索・毒性評価による創薬研究を効率的に行うための装置の開発を行う。

 CiRAではiPS細胞から様々な組織や臓器の細胞へ分化させる技術開発が進められている。患者由来のiPS細胞(疾患特異的iPS細胞)を用いて病態解明や治療法の研究開発を行うことが可能になっており、新薬開発の初期段階における副作用検査や創薬ターゲット探索など創薬分野でのiPS細胞の活用が期待されているという。

 カネカは、これまでに細胞培養工程でCPC(Cell Processing Center)のようなクリーン度の高い施設を必要としない自動細胞培養装置を開発・上市し、国内では理化学機器として販売している。今後さらに細胞培養装置の新たなターゲットとして、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の技術を活用し、iPS細胞を用いた創薬スクリーニング装置の開発に取り組む。

 今回の共同研究を通して、iPS細胞を用いた創薬スクリーニングを簡便かつ短期間で行うことができる装置を開発することで、根治薬のない希少・難治性疾患に対する治療薬の開発が促進されることが期待できるとしている。

 iPS細胞に関してはすでに、CiRAの山中伸弥教授が臨床実験段階にあると声明を発表しており、パーキンソン病や認知症の治療に向けた臨床実験がスタートしている。加えて今回の自動培養装置の開発開始だ。実用化への大きな期待が実感できる。(編集担当:慶尾六郎)