半導体メーカーのロームが、産業機器や車載分野を中心とした24V入力系DC/DCコンバータに最適な耐圧40VのパワーMOSFETを開発したと発表。すでに4月からサンプル出荷を開始しており、8月から月産100万個の体制で量産する。
DC/DCコンバータとは、直流電圧を直流電圧に変換する電源回路のこと。例えば、サーバーやパソコンなどの機器内部で基準とする電圧の12Vを、マイクロプロセッサやメモリーなどのICを動作させるためのさまざまな電圧(5Vから0.9Vなど)の電圧に変換するものである。近時、様々な機器において低消費電力化が求められており、DC/DC電源回路においても電力変換効率の改善による省電力化が進められている。中でも電力変換に大きな影響を与えるパワーMOSFETは、さらなる低損失化、高効率化が求められており、ロームもこれまで民生機器向けにミドルパワークラスの高効率MOSFETを数多く開発・販売していた。こうした中、24V入力の大型でハイパワーな産業機器や車載分野の拡大に伴い、耐圧40Vクラスで大電流に対応した高効率パワーMOSFETへの需要も高まり、今回の開発・量産化に至ったという。
新シリーズでは、用途別に6種類のパッケージを採用した全13製品をラインアップ。9Aから100Aという幅広い電流値に対応している。また、ローム独自の低容量構造や「トレンチ型フィールドプレート構造」を採用したことで、業界最高クラスの高効率性能を実現。従来の一般的な製品に比べて電力変換性能を約30%改善し、特に大電流を必要とするハイパワーな機器のDC/DC電源回路における低消費電力化に大きく貢献するものとなっている。さらに、同期整流回路での性能を確保するため、UIS(L負荷アバランシェ耐量)について100%試験を実施しており、品質面でも高い信頼性を有しているという。
新シリーズは、産業機器にも適当とのことであるが、期待されるのは車載用機器への利用であろう。電気自動車が普及する上で大きな課題となっている航行距離。これを伸長する為には、あらゆる部品の低消費電力化が必須である。ロームは先月も、業界最高の低暗電流6μAを実現した耐圧50Vの車載用LDOレギュレータ「BD7xxL2EFJ-C シリーズ」を開発したと発表するなど、この分野に対して積極的な取り組みを見せている。日本経済の一翼を担うとも言える自動車産業。共に日本の発展を牽引した家電業界が低迷し、各社大幅な赤字を計上する中、その役割は一段と重くなったと言えるであろう。その産業を蔭で支えるのが、今回発表されたような日本の技術である。日本経済復権・復興のためにも、海外企業には真似の出来ない、追随を許さないような技術の研究・開発が今後も進められることを期待したい。