日本心理学会が発行する「心理学研究」に、九州大学の縄田健悟講師が「血液型と性格の無関連性」という論文を発表した。この研究は日米10,000人以上を対象に2004~05年に実施されたアンケートをもとにして、血液型による違いが科学的根拠に基づくのかを検証するというものだ。好みや計画、宗教、ギャンブル、恋愛など68項目について調査したところ、そのうち65項目において血液型による特徴的な傾向やパターンは確認されず、血液型と性格は無関連だという結論に至った。残りの3項目についても、0.3%以下の割合でしか血液型による違いを認めることができなかった。
海外では血液型と性格を結び付けて考えることは一般的ではない。しかし日本では、A型は真面目で神経質、B型はマイペースな自由人、O型は社交的だがのんびりや、AB型は個人主義で二重人格などという捉え方が血液型性格診断として定着している。血液型による相性診断も人気で、人間関係を占う簡単な手段として広がっている。
日本に根強い血液型による性格分類は、企業人事にも影響を及ぼしている。1970年代から血液型を会社の能率アップに利用しようとする向きがあり、90年にはある企業が商品開発のための斬新なアイデアを求めて、AB型である5人の社員を集めてプロジェクトチームを作ったという。しかし、血液型による就職差別の問題も浮上し、2011年8月22日の朝日新聞の記事では、採用面接において血液型を聞かれた女子学生が「B型」と答え不採用となった例が紹介された。血液型が採用の合否に直接関係したのか明らかにすることは難しいが、面接時に行われる血液型への質問の意図には「B型よりもA型の方が真面目」とする非科学的な考えが見え隠れする。
各自治体においても、面接時などに血液型を尋ねることは就職差別に繋がるとして注意を促している。愛知労働局が発表した12年度の「就職差別につながるおそれのある事象」の中には、面接時に血液型への質問がなされた事例と対応が紹介されている。就職希望者の緊張を和らげるために雑談に及び、その最中につい血液型を質問してしまったという企業に対し、愛知労働局は、求人内容や職種、業務とは無関係であるはずの個人の血液型の把握は必要ないと判断し、そのような質問を面接時に行うことは不適切であると指導を行った。
また熊本労働局も事業主に対して、採用時に応募者の基本的人権を侵すような質問や試験を行わないことを求め、「血液型・星座は何ですか?」と尋ねることを不適切な質問の例として挙げている。血液型と性格の関連はないというこのほどの検証結果だが、果たして日本は血液型信仰から脱することができるのだろうか。(編集担当:久保田雄城)