普及の進むスマートハウスの住宅メーカーごとの違いとは

2012年07月17日 11:00

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積水ハウスの「グリーンファースト ハイブリッド」における平常時の使用電力の優先順位。平常時と非常時とに限らず、最適な電力制御を常に自動で実施してくれる。

 昨年の東日本大震災を機に、住宅に対する安全・安心やエネルギーの供給不安解消を求める意識やニーズが一気に高まり、それと同時に、スマートハウスという言葉が広く使われるようになった。しかし、スマートハウスという言葉からどんな住宅を連想するだろう。「賢い家?」「省エネ住宅が進化?」と、今一つピンとこないのが実状ではなかろうか。事実、スマートハウスを提案する住宅メーカーもそれぞれの思いを込めた提案を行い、スマートハウスの定義は確立されていない。では、住宅メーカー各社はスマートハウスをどう捉え、商品として提案しているのであろうか。

 大和ハウスでは、太陽光発電システム・蓄電池・HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を搭載した「xevo(ジーヴォ)スマ・エコ・オリジナル」をスマートハウスとして展開。省エネ性と耐久性の高い住まいを実現してきたxevoを軸に独自HEMSの「D-HEMS」を搭載し、蓄電池の自動制御やエネルギー状況の「見える化」により、「ゆとり」のある生活が出来る住宅としてスマートハウスを提案している。同社のリリースによると、冬期連続運転可能時間が約2時間45分と蓄電池容量が小さいことから、平常時の省エネと一時的な停電対策を主目的としたスマートハウスと言えるであろう。

 住友林業は、「スマートソラボ」を展開。そこで生活する人々のライフスタイルごとに最適なエネルギー機器を組み合わせることで、エネルギーをつくり、たくわえ、賢く使うという知恵をプラスした住まいとしてスマートハウスを提案している。エネルギー機器としては、太陽光発電システム・家庭用蓄電池・家庭用燃料電池・HEMSに加え、電気自動車の蓄電池を家庭用の蓄電池として利用することを可能にするV2Hシステムもラインナップ。多様な機器を組み合わせることが出来る点に同社の特徴が見られるが、一方で、「HEMS=見える化」という意味合いが強く、ラインナップは充実しているものの、機器の連携で効率化を図るのではなく、機器の個別的な性能と住人の高い意識による節電が主眼となっているようである。

 積水ハウスの展開する「グリーンファースト ハイブリッド」は、安心・安全・快適性・経済性・環境配慮といった、住まいに求められる条件を兼ね備えた上で、平常時には節電、停電時などの非常時には「いつも電気のある安心の暮らし」を可能とするもの。太陽電池・燃料電池・蓄電池の3電池を独自開発したHEMSにより連動制御することで、平常時における最適な電力使用の自動制御だけでなく、曇天時や非常時におけるエネルギーの自立した生活もコンセントの差し替えなど住人の手を煩わせずに自動的に実現する。8.96kWという大容量蓄電池の設置が非常時の為だけでなく効率的なエネルギー制御の一環であることからも、住まいに求められる条件と、地球環境や節電社会への貢献の双方を追求した結果、スマートハウスに辿り着いたといった印象である。

 節電の夏がスタートし、様々なアイディアで暑い夏を乗り越えようという取り組みも本格化してきた。しかし、我慢の節電では長続きせず、健康面への影響も心配となる。また、今後は自動車や家電も巻き込んだスマートハウス開発競争が激化し、スマートグリッドによる住宅同士の連携の拡大も確実視される。こうした中で求められるスマートハウスとは、単にエネルギーの見える化を図ったものではなく、先進の機器を連動させて、そこに住まう方の快適な生活を実現した上で、自然と節電社会にも貢献する住宅であろう。とすると、積水ハウスのスマートハウスが他社よりも一歩先を行っていると言えるのかもしれない。