環太平洋連携協定(TPP)の交渉会合が9月1日から10日まで実施され、12カ国の首席交渉官がベトナムのハノイに集まった。会合の中でカナダが日本に対し、農産物の関税率を米国の交渉結果と等しくするように要求。
環太平洋連携協定(TPP)の交渉のため12カ国の首席交渉官は9月1日、ベトナムのハノイで会合を開き協議を開始した。会合に臨んだ鶴岡公二首席交渉官は出発の際、東京の羽田空港で記者団の取材に応じ、知的財産などの分野の交渉に意欲を持っていることを表明した。また、政治的な決断に迫られたときにはどれだけ事務的な準備ができるかが大きな課題とし、今回の交渉はその段階の一部という発言を行ったが、結果は日本に対しさらなる厳しい条件が付きつけられる格好となった。
会合は10日まで実施され、初日から翌日にかけては首席交渉官同士の2国間協議となった。3日から最終日にかけては参加国全体での会合となり、知的財産や国有企業、環境、技術的分野に関する交渉内容の整理が進められた。中でも注目を集めたのが関税率の扱いだ。会合中にカナダが日本に対し、農産品の関税は米国と同じ税率にすることを要求。日本市場において農産品の中でも牛肉や豚肉は、米国とカナダが競争相手国となる。日本が米国との間に優位な関税を設定してしまうとカナダは不利な立場に立たされるため、関税率を米国の交渉結果と同じものを適用することを求めた。
交渉に立った日本の関係者はカナダの強気な姿勢に対し、「要求するばかりでこちらが示す条件については受け入れる気配はない」と反発をあらわにした。しかし10日には西川公也農水相が、重要農産物については全ての交渉相手国の関税率を一律に揃える考えを示した。
関税率の交渉にどこまで応じるのかは大きな課題だが、日本政府内では米国以外の国に対しても、ある程度の要求を飲むことは避けられないとの見方もある。関税を譲歩した場合でも、国内産業を守るために輸入量を制限する「緊急輸入制限(セーフガード)」の措置をとりながら対応していきたいとの考えを示している。
交渉が難航しているTPPだが、オバマ米大統領は11月までの大筋合意を求めており、時間的な余裕はあまりない。今後さらに協議は加速していくことが予想されるが、どこまで条件を調整することができるのか、あくまで慎重に議論を進めていく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)