どうなるTPP 新たなシナリオを模索する安倍政権

2014年02月28日 20:46

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25日に閣僚会合が終了したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。期待されていた大筋での合意は見送るかたちとなった。

 今月、25日に閣僚会合が終了したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。期待されていた大筋での合意は見送るかたちとなった。4月の下旬に予定されている日米首脳会談までに「違うシナリオを用意しなければならない」(外務省幹部)などの声も挙がっている。これだけ難航すれば、撤退するべきとの声も大きくなることは必至。このまま合意したら完全に党決議に違反する」(農水副大臣経験者)。農林部会などでは「撤退論」が相次ぐことが予想される。そもそもこのTPPは安倍政権の成長戦略の大きな柱とされているが、日本にとっては失うものが大きく、得るものは少ない。妥結が長期化することが予想される今となっては、アベノミクスに利するところは少ない。撤退の選択肢も考えられる。外務省幹部の言う「違うシナリオ」とは撤退の可能性かもしれない。

 このTPPでの背景には中国の巨大化がある。米国としては、中国がさらに経済的に巨大になるまえに、世界共通のルールを作ってしまいたいという思惑がある。もうひとつはオバマ大統領が議会での信頼を回復するために、日本をはじめアジアでの有利な交渉を勝ち獲りたい意向もある。「聖域なき関税撤廃」を強硬に進めたい米国にとっては、日本に対してある程度の譲歩は認めるにしても「聖域」を守ろうという気はさらさらないということが明確になったのが、今回の閣僚会合ではなかろうか。

 ナショナリズムを実践する安倍首相の強気な外交姿勢で、TPP交渉がこのまま長期化するのであれば、撤退を宣言することも考えられる。そうなると懸念されるのは、南米や東南アジアなど、他の参加国から孤立することだ。今年1月、フロマン米通商代表部(USTR)代表がスイスで会談した際には、茂木経済産業相や林農相に「日本が農産品で譲歩しなければ、日本抜きもある」と迫ったという話もある。米国は他の交渉国にも同様に「日本外し」を示した。

 しかし今回の閣僚会合では、日本以外の新興国も米国の要求する外資規制の関税を撤廃するルールや関税交渉などでは妥結を見てないこともあり、「日本が孤立することはない」との見方もある。今後の世論の動向もあるが、撤退を視野に入れて、日本が動きだす可能性も大いにあると見てよいのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城