安倍政権は成長戦略のひとつとして、「カジノ解禁」を掲げる。現在の法律では刑法上の「賭博罪」にあたり、禁止されているカジノ施設を、特区に限り許可する考えだ。超党派議員でつくる「国際観光産業振興議員連盟」には、カジノ誘致に前向きな安倍首相や、麻生太郎副総理、前東京都知事の石原慎太郎氏らが参加している。同連盟はカジノ誘致のほか、パチンコの換金合法化も進める。16日には、国会内で総会を開き、カジノを中心とする統合型リゾート施設推進法案(カジノ解禁法案)の修正案をまとめた。施設がもたらす経済効果や、雇用創出効果を掲げ、「カジノミクス」との言葉も聞かれる。
足早に「カジノ解禁」を進めようとする政府に対し、世論は戸惑いを見せる。読売新聞は17日の社説で、「とにかく2020年東京五輪に間に合わせようという安直な発想」であると批判。ギャンブル依存症や犯罪の増加など、カジノの「負の側面」に正面から向き合おうとしないのは、「極めて問題である」と強い調子で説いた。背景には、カジノ解禁法案が当初、利用者を外国人に限定する方針だったのに対し、わずか3日後に「外国人客だけでは経営が成り立たない」との理由から、日本人の利用を条件付きで認める方針に変わったという経緯もある。カジノ施設が地方にもたらす経済効果を強調する向きも多いが、あまりに早急な議論の進め方には疑問が残る。
毎日新聞が18~19日に実施した世論調査では、「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)について、「反対」が62%と「賛成」の31%を上回った。男性では反対が56%に対し、女性は67%が反対と答えた。自民党支持層でも56%が反対しており、公明党支持層は8割が反対だった。
厚労省の調査によれば、国内には、パチンコや競馬などをやめられない「ギャンブル依存症者」が500万人以上いる。成人男性の1割弱が当てはまり、世界各国と比べても高い水準だ。地方への経済効果はあるかもしれないが、カジノ解禁という「諸刃の剣」を前に、議論は全く足りていない。(編集担当:北条かや)