ギャンブルがもたらした影響の把握が急務ではないか

2014年06月29日 14:06

 カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)の整備を政府に促す推進法案が国会で議論される。臨時国会で本格的に審議が行われる模様で、年内の法案成立が見込まれている。IRとは何か。合法のカジノを核にして、その周辺にホテル、展示場などのコンベンション施設、ショッピングモール、劇場や遊園地などのエンタテイメント施設、文化的施設、医療・健康関連施設等を併設した「複合型」の観光・集客・商業施設のことを言う。

 電通<4324>などが実施した意識調査によると、IRについての国内居住者の認知率は71.8%で、国内居住者の61.2%がIRの導入に、賛成(どちらかといえば賛成を含む)の意向を示した。日経ビジネス オンラインの読者で世帯年収500万円以上の国内外約1,400人を対象にした調査であることはおいておいても、非常に期待を持たれている模様だ。自治体も誘致に熱心であり、カジノを誘致しようとしている自治体は東京都、大阪府、横浜市、千葉県、沖縄県、北海道、徳島県、秋田県、佐世保市、宮崎市、熱海市などがあげられる。関連企業も含め、雇用創出、観光客の増加、カジノ収益に期待をかけている。海外の企業も虎視眈々と進出を狙っている。

 日本の刑法は全ての賭博行為を禁止している。そのため、特別立法で競馬、競輪、ボートレース、宝くじなどをこれまで認めてきた。多くの人がその恩恵を得ているが、カジノのもたらす悪影響を懸念する声は根強い。中でも、ギャンブル依存症である。ギャンブル依存症とはギャンブルをしたいという強い欲求があり、経済・職業などに悪い結果をもたらすほどの状態だ。さらに、本人の周囲も困っている状況も含まれる。全国規模の調査は少なく、厚生労働省の厚生労働科学研究(2009年度版)によると男性の10%弱、女性の2%弱がギャンブル依存であることがわかっている。カジノ推進派の岩屋衆議院議員は、「これまでのギャンブル依存症に対する調査、対策は不十分だった」との認識を示している。なぜギャンブル依存症数の正確な把握を今まで行われてこなかった理由を明らかにしてもらいたいものだ。その上でカジノの是非を論じるべきではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)