賛成?反対?カジノ法案の行方は

2014年10月24日 12:06

画・賛成?反対?カジノ法案の行方は

ギャンブル依存が少ない国では、まず国をあげてのギャンブル政策が議論・実施されている。例えばノルウェーでは、1日や1ヶ月に使用できる金額や時間を国が定め、それを超えると機械が自動停止するように制御されている。結果、依存率は成人人口の1.1%まで減少したという。

 カジノを含む「統合型リゾート(IR)整備推進法案」、いわゆるカジノ法案を巡り、国民はもちろん、各政党や都道府県首長の間でも賛否の意見が割れている。毎日新聞社が10月18、19日に行った世論調査では、カジノ法案に対し反対が62%、賛成が31%。安倍政権はカジノ法案を成長戦略の目玉と考え早期の成立を目指しているが、この数字からも国民の反発は根強そうだ。

 賛否が割れているのは国民だけではない。自民党が法案成立を進めたい一方で、野党である民主党の他、同じ与党である公明党もカジノ法案には慎重な姿勢を崩していない。日本維新の会と結いの党が合流した維新の党でも、維新側の橋下共同代表は法案成立に前向きだが、結い側の江田共同代表は否定的で足並みが揃わず、党としての賛否を決めかねている状態だ。

 また、橋下共同代表は同法案について、井戸兵庫県知事とも意見対立を起こしている。井戸兵庫県知事は「ギャンブル依存症など負の影響を考えず、地域振興のために手段を選ばない姿勢は間違っている」と、カジノ法案を真っ向から批判した。これに対し大阪へのカジノ誘致を目指す橋下共同代表は、「カジノだけを排除して、兵庫県のパチンコなどはどうなのか」と反論。この反論はギャンブル依存症など悪影響への返答にはなっておらず、論点のすり替えだと感じなくもないが、阪神競馬帳や園田競馬場を主催し、大阪から多くの「顧客」を得ている兵庫県への皮肉ともとれなくない。

 カジノ法案賛成派の最大の主張は経済効果だ。雇用増大などの波及効果も含め、その額は7兆7千億円とも試算されている。同時に地方の観光活性化の一手になるという声も大きい。

 反対派の最大の理由はギャンブル依存症への対策だ。すでに日本ではパチンコなどを中心に、ギャンブル依存症で、家庭や仕事を失ったり犯罪や自殺に至ってしまったりと、深刻な社会現象となっている。ギャンブル依存症患者は日本に500万人以上いるとされ、人口比率で言えば成人の4.8%。世界トップクラスだ。こうした問題への対策が十分に講じられていない状態で、カジノ解禁に踏み切るのは危険だという意見が強い。

 賛成派はこうした指摘に対し、利用を当面外国人に限定する形でかわそうとしていたが、やはりそれでは経済効果が弱いと感じたのか、日本人・外国人問わず入場制限を設ける形に再修正するなど、右往左往している。どうも、成立ありきの修正で、ギャンブル依存症など負の影響を真剣に議論した結果の修正とは感じられない。

 また、経済効果の大きさにも疑問が残る。「試算・7兆7千億円」、ひとつ7が足りないが、賛成派はスリーセブンを狙って、ギャンブル依存症患者のように後先考えずに突き進んでいるのではないか。個人にも国にも一攫千金など、そうありはしない。目を覚まし、慎重な議論を進めるべきではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)