シンガポールでは自国民のカジノ入場に厳しい制限を設けている。外国人は無料で利用できるのに対し、シンガポール人であれば毎回100シンガポールドルを払わねばならない。生活保護受給者や破産申告者、公的援助を受けている失業者や低所得者も入場禁止となっている。
昨年の年末に、自民党、日本維新の会、生活の党の3党が共同で国会に提出したのがIR推進法案だ。IRとは複合的な施設を意味し、カジノをはじめホテル、レストラン、ショッピングセンター、劇場ホールなどを合わせて設置する。またビジネスでの使用を目的に、見本品を並べることのできる広い展示場と会議室も用意し、海外からの顧客との商談も可能だ。複合的に様々な施設が組み合わさることで多目的なニーズの受け皿となり、買い物客や観光客の増加に効果を発揮する。カジノを含むIRを地域に誘致することで、地域産業の活性化や雇用の創出も期待される。しかし、高い経済効果がもたらされる反面、ギャンブル依存症などの社会的悪影響を不安視する見方も広がっている。
今年5月に安倍首相が視察したシンガポールのカジノは、2010年に設置されたばかりだ。それからわずか3年間で、外国人観光客は6割増え、観光収入は8割増にもなっている。日本でも政府内でカジノがもたらす経済効果に高い関心が寄せられており、カジノ施設設置に向けて積極的な議論が交わされている。一部では、日本国内にカジノ施設を数カ所に設ければ、およそ5兆円の経済効果が生まれると予想されている。
日本が見習おうとしているシンガポールのカジノだが、自国民のカジノ入場については厳しく制限している。生活保護の受給者や破産申告者は入場ができない。また、ギャンブル依存による相談にも応じていて、本人や家族の申請を受けて入場禁止という措置をとっている。さらに公的援助を受けている低所得者や失業者、公営住宅に住む者のうち賃貸料を半年以上滞納している者などにも、カジノの禁止を申し渡している。外国人は無料で利用できるのに対し、シンガポール人であれば毎回100シンガポールドルを支払わねばならない。開業当初には住宅街とカジノ施設を無料シャトルバスが走行していたが、これもしばらくの後、廃止されている。国民のカジノ利用を抑える方策が、国主導で行われているようだ。日本でもこのような対策について、十分な議論が必要と思われる。(編集担当:久保田雄城)