政府は10月29日、宇宙開発の目的や方向性を定める新たな「宇宙基本計画」の素案を発表した。国の安全を守るために情報収集を行う衛星を現在の4機からさらに増やすことや、衛生利用測位システム(GPS)の精度を補強する「準天頂衛星」を1機から7機に増やすことなどが含まれている。また、人工衛星の軌道離脱の原因となる宇宙ごみを監視する施設を設けることや、国内ロケットの発射場の見直しなども検討されている。官民合わせて10年間で5兆円の事業規模を見込み、政府は宇宙開発戦略本部(本部長・安倍晋三首相)で宇宙基本計画を年内までに策定する方針だ。
宇宙計画の中でも重点項目として捉えられていた宇宙科学についての記述は少なくなっており、米国からの提案である国際宇宙ステーションへの協力については、返事を保留する形で先送りし、参加するか否かについては2016年度まで決定を据え置くとしている。今回の計画素案では有人活動や宇宙探査を目的とした宇宙開発よりも、軍事的な意味合いの強い安全保障を優先する内容となっている。
北朝鮮の核開発やミサイル発射、中国の資源開発、領土拡大の動きなど、近隣諸国の軍事的行動が活性化する中、日本の外交・安全保障の向上は大きな課題だ。政府は宇宙を国の安全を守るための新たな拠点として考え、民間による宇宙産業を促すとしている。そのためには基準となるルール作りが必要となる。計画素案では「宇宙活動法」の整備が掲げられており、宇宙事業に参加する企業に対し、衛星やロケットの打ち上げに際して公共の安全を守る義務や、事故時の被害者に対する保護や賠償責任を負うことが盛り込まれる。衛星によって取得したデータの活用法についても法整備を行っていく方針だ。
政府は宇宙開発をビジネスとして、官民で連携を図りながら国際市場に積極的に売り込んでいくための作業チームも設置する予定。巨額な費用がかかる宇宙開発。安全保障を目的とする上でも税金を投入する以上は、確実な収益の確保が求められる。(編集担当:久保田雄城)