電気自動車の普及や自動運転化の進展に伴い、車載用電子部品の需要が高まっている。
これまで主戦場であった薄型テレビやノートパソコンなどのAV機器の需要が大幅に減退し、さらには欧州市場の低迷や新興国市場の成長鈍化もあって、日系電子部品メーカーは新たな成長分野として期待される車載用や産業機器向けの電子部品へとシフトチェンジを余儀なくされている状況だ。すでに、技術力の補完や販路の拡充を意図したM&Aを積極的に進めて今後の布石を打つ企業も現れており、各社の動向が注目されている。
そんな中、ローム株式会社も需要が拡大するLSI後工程(組み立て工程)の生産能力強化を目的にタイ・バンコク近郊のパトゥムタニ県に位置する同社の製造子会社であるROHM Integrated Systems (Thailand) Co,Ltd(以下、RIST)に新棟を建設することを発表した。
新棟は、延べ床面積28,800平方メートルの3階建ての建屋となり、2014年12月より着工し、2015年12月に竣工する予定。投資額は最大150億円が見込まれている。ロームが工場を新設するのは8年ぶりで、しかもRISTは2011年に起こった大洪水で甚大な被害を受けて以来、今回建設される新棟ではこれを教訓に1階部分を3メートルかさ上げすることで、洪水被害にも万全の備えを施す。
ロームの強みは何といっても、自社一貫生産による品質の高さと信頼性だ。昨年は前工程のシリコンウエハーを生産する静岡県などの工場で設備を増強している。そして今回、後工程を担うRISTの新棟と既存のフィリピン工場を合わせたLSI生産量は現在の1.4倍に拡大される予定だ。
ローム製品をはじめ、日本の電子部品は小型・軽量、耐圧、耐熱などに優れている。今後、電気自動車やハイブリッド車の普及に伴って電子部品の数が大幅に増えることが見込まれているが、その中で高い信頼性をもつ日系電子部品メーカーの存在感も増していくことは明白だ。後は、その機会をいかに拡大するかだろう。5年後、10年後のメーカー各社の勢力図は、現在の各社の施策の巧拙で二極化するかもしれない。(編集担当:藤原伊織)