米アマゾンが新しい試みを続けている。新たなサービスとして発表されたのは、プライム会員向けの自社ブランド「Amazon Elements(アマゾン・エレメンツ)」だ。アマゾン・エレメンツ第1弾商品は、赤ちゃん用のおむつとおしり拭きのベビー用品2点。今後のラインナップはまだ発表されていないが、日用品を中心に取り揃えていくとしている。
商品の特徴は、透明化された情報の豊富さだ。素材や製造元の詳細や、なぜその素材が選ばれたかの理由などを、他社製品よりも豊富に盛り込んでいる。安価なプライベートブランドではなく、安心と信頼に比重を置き、求められる情報をすべて伝えることによって、日用品に安全性や高品質を求める人々のニーズに応えていく姿勢のようだ。そうした理由から、特に安全面や素材情報に気を遣うベビー用品をスタートラインナップとしたことが伺える。また、そうしたブランドイメージであるためか、価格もそこまで低くは設定されていない。パンパースやハギーズといった大手ベビー用品ブランドに比べても、1割ほど安い程度となっている。
一方で米アマゾンは、数字上は苦境に立たされている。2014年7月に発売されたアマゾン発のスマートフォン「ファイア」が不振に終わり、14年7~9月期決算では、純損失4億3700万ドル、赤字は前年同期の10倍となった。投資家からは現在の経営状況に苛立ちの声も聞かれるが、単純な失速というよりは、商売のやり方をシフトしている過渡期のようにも見える。そのシフトとは、安さ重視からサービスの質重視への変化ではないだろうか。
事実、利用者からは、米アマゾンの小売値下げ幅はこの1年ほどで小さくなっているという声も多い。その一方で、プライム会員に対し、無料の動画や音楽のストリーミングサービスや、電子書籍の定額読み放題サービスなどを積極的に行っている。それに続いて、今回の品質情報と安全性を重視したプライベートブランドの発表だ。プライム会員という確実な顧客に、質重視のサービスを数多く提供することで、ブランド全体のイメージを変えていこうという戦略があるのではないだろうか。
「アマゾンなら何でも簡単に手に入る」という価値に、さらに「アマゾンだからこそ手に入る物・情報がある」という付加価値を加えていくイメージ戦略。それが成功すれば赤字脱却だけでなく、さらに世界の小売を変えていくかもしれない。(編集担当:久保田雄城)