独自仕様スマホ事業が裏目 米アマゾン赤字10倍増

2014年11月30日 12:53

 米アマゾン・ドット・コム(以下アマゾン)は11月23日、2014年度7~9月期の決算を発表した。売上高は前年同期と比較し20%増の205億7,900万ドル(約2兆4,283億円)と約20%増だったが、純損失が前年同期比約10倍の4億3,700万ドル(515億円)と膨らんだ。

 ネット流通産業として米国内では圧倒的な存在感を示すアマゾンだが、売上高に比較して、この赤字比率は同産業でも異例な数字だ。
 
 赤字の主な原因として指摘されるのが、同社独自仕様のスマートフォン「Fire Phone」の失敗だ。 Fire Phoneは今年6月に発売された。アマゾンはFire Phone事業にインフラ整備要因を含める約数千人を投入したが、グーグルのアンドロイド端末とアップルのiPhoneの2強による寡占状態にあるスマートフォン市場では苦戦を強いられた。

 Fire PhoneはアンドロイドやアップルのiOSと異なる独自のOSを採用。もちろんアップルのApp StoreやグーグルPlayストアのコンテンツは利用不可能だ。高画素数のカメラ、4つのカメラセンサーを備え3D機能を強化するなど他社製品をしのぐハードウェアスペックを持つハイエンドモデルで、価格も32GB版が649ドル(7万6,600円)という高価なものになった。

 もともとFire Phoneの主要コンセプトのひとつは、ユーザーの目の前のあるモノをアマゾンのサイトで購入するという同社通販システムと不可分のビジネスモデルである。「Fireflyキー」というキーが搭載されており、ユーザーの接している音楽、雑貨、DVD、書籍などがすぐアマゾンのサイトを通じて購入できる仕組みだ。

 しかしスマートフォン自体が先進国でコモディティ化し、中国メーカーなどの低価格製品が世界的シェアを増大させる現状において、アマゾンがFire Phoneビジネスを推進することは厳しい戦いが予想できたはずだ。現に高額だったFire Phone端末は在庫放出のため200ドル(2万3,600円)、さらに99セント(117円)という投げ売り状態に追い込まれた。

 また、アマゾンはスマートフォンやハリウッド型の番組制作、生鮮食品配送など、他の分野にも多額の投資を行っており、単なる「巨大ネット書店」から「総合ネット流通産業のガリバー」への脱皮を目指すというのが、CEOのジェフ・ベゾスや投資家の共通のヴィジョンといわれるが、今期決算を見る限り、これらの投資が結果を出すのはまだまだ先といえそうだ。(編集担当:久保田雄城)