関税値下げで格安オージービーフ販売加速か

2015年01月29日 12:39

 日本とオーストラリアの間で結ばれた経済連携協定(EPA)が1月15日に発効され、オーストラリアから輸入する牛肉などの関税が引き下げられた。これまでの牛肉の関税率は38.5%だったが、今後は冷蔵肉を32.5%、冷凍肉を30.5%にまで下げる。関税は段階的に下げていく予定で、15~18年後には20%前後になる。この影響により、オーストラリア産牛肉は国内市場で4割近いシェアを伸ばしていくことが予想されている。

 スーパーでは牛肉の値下げセールが実施されており、早くも歓迎ムードだ。イオン<8267>は2月末まで全国の店舗約1,200店で、オーストラリア産牛肉やワインなどを格安価格で販売。これまでと比較して最大2割まで価格を下げ、客足を呼び込んでいる。イオンリテールの土谷美津子専務は、1月14日にオーストラリア産牛肉のセールに関する説明会を開き、「値下げは一時的なものではなく、今後も続けていく」と話した。現在のセール商品はEPA発効前のもので、関税引き下げの動きを先取りしたフェアとなる。

 牛肉の値下げが国内で本格化するのは4月以降とみられており、他のスーパーでも続々とオーストラリア産牛肉が手頃な価格で出回るだろう。外食産業にとっても追い風で、オーストラリア産牛肉を使用している「すき家」では仕入れコストを下げることができるため、増収に繋げることができると期待を高めている。昨年4月に実施された8%消費税増税以降、財布のひもが固くなっている消費者にとっては嬉しいニュースかもしれない。

 しかしその一方で、国内の生産者にとっては大きな打撃となる。政府は緊急輸入制限措置(セーフフード)を設けて国産牛肉を保護するとしているが、店頭に並ぶ輸入牛と国産牛の価格差は今後さらに広がっていくだろう。景気回復の兆しが見えない中で、消費マインドの冷え込みがこのまま続けば、割高の国産牛の売行きはますます厳しくなる。政府は国内生産者を守るための対策を進めていくとしているが、EPAの影響により、国内牛肉市場に大きな波紋が起こることは避けられない。(編集担当:久保田雄城)