TPP閣僚会合が閉幕 日米対立の陰で新興国の市場開放「例外」扱いへ

2014年11月02日 19:18

 10月27日、日米など12ヶ国が参加してオーストラリア・シドニーで開かれていた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が閉幕した。関税などの物品市場アクセスや知的財産などのルール分野で「重要な進展」があったとの声明が出されるとともに、オーストラリアのアンドリュー・ロブ貿易・投資大臣は関税やルール分野の交渉が「最終ゴールが視野に入ってきた」と述べるなど、表向きは進展があったとされるが、開幕から見られた各国の対立は完全には解消されなかったようだ。

 知的財産分野における先進国と新興国の対立や、外資による国の提訴に賛成する日米と反対するオーストラリアなど、TPP交渉には様々な対立軸があるが、その中でも影響が大きいのが関税をめぐる日米の攻防だ。ロブ貿易・投資相は日米2国間の関税協議も「主な争点ですでに決着点を見出しているように見える」と語っていたが、ロブ氏の認識とは異なり、協議の当事者である甘利明TPP大臣は26日、「難航する案件がいくつもある」と述べ、合意は難しいとの認識を示した。参加国全体の協議も日米がまとまらなければ進まないとされ、協議全体が日米の交渉難航に引きずられての閉幕だった。閉幕後に甘利大臣は「日数はかなり厳しくなってきている」と述べ、来年以降に交渉がずれ込む可能性を示している。

 終わりの見えないこの日米の対立の裏で、新興国との間にある合意が為されたことはあまり知られていない。この合意は、日本にとって米国との協議と同様に重要なものだ。閉幕の前日26日、閣僚会合は新興国に市場開放の例外を認める方針で合意した。これにより、新興国はこれまで難航していた国有企業改革について、各国の事情に基づいた例外対応を要求することが可能となった。ベトナムは一部外国企業の参入を制限する制度、マレーシアも外国企業にマレー企業による出資を義務付ける仕組みの維持を求めていたが、このような「例外」規定が増えれば増えるほど、日本にとってのTPPのメリットである新興国への進出の魅力が失われていくことになるだろう。

 自らばかりが市場開放を要求され、進出したい新興国には例外が求められたのではTPPに参加する目的を再検討しなければならないだろう。新興国は交渉により自らの利益を勝ち取った。日本政府にも同様の交渉力があることを期待したい。(編集担当:久保田雄城)