衛星需要の取り込みで膨らむ宇宙産業への期待

2013年01月08日 08:19

 昨年度の上期実績では経常損益にて104億円ものマイナスを出していたものの、2012年度第2四半期決算においては同299億円のプラスに転じているなど、業績回復に向けて着実に歩みを進めているNEC<6701>が、新たな投資を発表した。それが、人工衛星の組み立てや評価・試験などを行う新工場を建設である。

 NECはこれまでに、1970年に打ち上げられた日本初の人工衛星「おおすみ」を皮切りに、小惑星イトカワからのサンプルリターンを達成した小惑星探査機「はやぶさ」や第一期水循環変動観測衛星「しずく」など、66機の人工衛星のインテグレーション(取りまとめ)を担当してきており、この実績を武器に、アジアをはじめとする宇宙新興国の衛星需要などを積極的に取り込み、2020年の宇宙関連事業規模1000億円を目指すという。

 投資額は建屋・設備を合わせて約96億円。しかし、経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業「先端技術実証・評価設備整備費等補助金」の採択事業であることから、NECの実質的な投資額は約76億円となる。新工場の着工は2013年3月、稼働は2014年6月と予定されており、新工場の稼働により既存工場と合わせて最大8機の人工衛星の組み立てが可能とのこと。

 宇宙関連事業に関しては、昨年の9月にも三菱重工<7011>が、H―IIBロケットの打上げ輸送サービス事業を開始すると発表している。H―IIBロケットは、2007年以降、同社が打上げを受託しているH―IIAロケットに比べ質量が2倍の大型人工衛星にも対応可能である。今回NECが建設を発表した新工場が、大型スペースチャンバーや最大26mの室内高を有する大空間作業室を備えるなど、大型衛星に対応可能な構造となっていることは、このH―IIBロケットによる輸送を念頭に置いたものといえるであろう。

 日本航空宇宙工業会によると、現在の国内の宇宙産業の売上は約2600億円とのこと。これは、1990年代後半に迎えたピーク時の30%減であり、さらに人員に関しても30~40%減少しており、宇宙産業基盤が弱体化・空洞化しつつあるという。新興国における衛星需要の拡大が確実視されるだけに、この弱体化・空洞化は食い止める必要があるであろう。また日本は、「困った隣国」に囲まれているだけに、防衛目的での宇宙開発は必須である。2013年は、官民をあげた積極的な宇宙戦略を期待したい。(編集担当:井畑学)