9万人を超える大観衆で埋まったオランダGPは、波乱のレースとなった。
82回目を迎える伝統のTTアッセン・サーキットの天候は晴れ。気温23度、路面温度37度のドライコンディションの中、レースは行われた。抜き所が少ないテクニカルサーキットは、1つのミスが命取りとなることから、レースは難しくなることが予想されていた。
今季3度目のポールを奪ったケーシー・ストーナー(ホンダ)、2番手には同僚のダニ・ペドロサ、自身初の4連勝を狙うホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)が3番手という、フロントローには今シーズンの主役達が揃った。セカンドローには4番手と自己最高のポジションを手にしたルーキーのステファン・ブラドル(LCRホンダ)、好調モンスター・ヤマハ・テック3のカル・クラッチロー、アンドレア・ドビツィオーゾと勢いのあるライダーが続いた。
ホールショットを奪うのは誰か注目を集める中、得意のロケットスタートを見せたのはペドロサ。そして、ストーナーに続き、アウト側からロレンソが1コーナーに飛び込もうとした瞬間、悲劇は起きた。8番手スタートのアルバロ・バウティスタ(サン・カルロ・ホンダ・グレッシーニ)が1コーナーで転倒。その巻き添えを食う形でロレンソもコースアウトし、いきなりポイントリーダーが姿を消すレースとなってしまった。
熱い首位争いを3強に期待する観衆の興味は25周を残して半減してしまう形となり、レースは淡々とホンダ・ファクトリーチームの1-2体制のまま進んで行った。もう一人のヤマハ・ファクトリーチーム・レーサー、ベン・スピースは3位を走行、ここ数レースでの復調ぶりを見せていた。
しかし、終盤に近づくにつれ、TTアッセン・サーキットではドラマが随所で起こっていた。
残り10周、タイヤのパフォーマンスを維持できないことに悩みを抱えるバレンティーノ・ロッシ(ドゥカティ)がタイヤ交換のため、ピット入った。その時コースでは、ストーナーが遂にペドロサを捉え、トップに立っていた。
その後、ストーナーはチームメイトとの差を徐々に広げ、最終的には5秒近くの差を付け、余裕の3勝目を飾った。さらに、最終ラップにはドビツィオーゾがスピースをかわし3位。今季2度目の表彰台を手にした。そして、4位のスピースに続き、クラッチローが5位とヤマハ勢が3台連なる形でフィニッシュした。
今回のオランダGPでリタイアのロレンソに対し、優勝したストーナーが離れつつあったポイントを同じにした(ランキングは勝利数の多いロレンソが1位)。不完全燃焼のロレンソが一体どのような走りを見せるのか、注目の集まる次戦ドイツGPはザクセンリンクで、7月8日に決勝が行われる。(編集担当:加藤隆文)