1991年度には150万台以上あったものの、2010年には辛うじて50万台を超える程度にまで縮小している国内の二輪車市場。30代以下のユーザーが減少し50代以上のユーザーが増加しており、高齢化も深刻で、更なる縮小は避けられそうにない状況にある。
こうした状況を受けて、二輪メーカー各社は東南アジアを中心とする新興国での動きを活発化。例えばヤマハ発動機<7272>が昨年発表した二輪車の新製品に関するリリースは、インドネシア市場向けモデルやタイ市場向けモデルの経済性向上、インド市場向け新製品などがその大半を占め、日本市場向けのリリースは数えるほどしかない。またホンダ<7267> も、日本市場向けにはカラーリング変更のリリースが多くみられたものの販売計画台数はどれも少なく、一方の東南アジアに関するリリースでは、タイやインドネシアでの新工場建設を発表しており、2013年1本目のリリースもタイでの新製品発売のものであった。スズキ<7269>も二輪車に関しては、フィリピンでの二輪車新工場開所やインドにおける二輪車新工場建設、中国での大型二輪販売開始などばかりである。成長市場に注力することは当然である。しかし、あまりにも日本市場が軽視されてはいないだろうか。
2012年3月に日本自動車工業会から発表された二輪市場動向調査によると、二輪車離れの主な要因として、「自動車・軽自動車・電動アシスト自転車の購入」や「維持費」「忙しくて乗る時間がなくなった」などが上がっている。さらに、東京23区では「駐車場で困った経験がある」という回答が兆社対象者の7割を超えるなど、駐輪場問題が一向に改善されていない。こうした不便さが、新規購入は減少傾向にあり代替が59%と需要の中心になっているにも拘らず、「継続乗車意向」を持つ人が87%と前回調査の92%から減少している要因であろう。各二輪車メーカーはこうした状況にどういった対策を講じているのか。目立った施策は見られないのが現状であろう。
先の二輪市場動向調査によると、女性は二輪車を「交通手段としての乗り物」「生活道具としての乗り物」と意識している人が多く、男性は「趣味の乗り物」と意識している人が多いという。景気が回復しない限り「趣味としての乗り物」としての市場回復は確かに困難であろう。しかし「交通手段」や「生活道具」としての意識が強い女性に対しては、まだ開拓の余地があるのではないだろうか。また、日本自動車工業会が実施した、東京都内の道路で二輪車(原付一種・原付二種・軽二輪)・乗用車・自転車・鉄道・バスの旅行速度実測調査では、渋滞ルート・非渋滞ルートに限らず二輪車が最も早い交通手段という結果が出たと言う。さらに燃費も良く省スペースであり、四輪車数台分のスペースがあれば二輪車はその何倍も駐車することができる。二輪メーカーが積極的にこうした利点をアピールし、インフラ整備に乗り出せば、十分に国内市場の維持拡大を図れるのではないだろうか。調子の良い市場にばかり注力するのではなく、おひざ元である日本でも再興を図る抜本的な施策がなされることを期待したい。(編集担当:井畑学)