なぜ“200万円”も?付加価値を積み上げた軽自動車の進化の歴史

2015年04月09日 08:42

 かつて、軽自動車は100万円も出せば購入できるという印象だった。将来の普通車購入を見据えて「とりあえず」買うクルマ。しかし近年では、軽自動車のグレード化が進み、中には200万円に近い価格で売り出されるものもある。ダイハツ<7262>の「ムーヴ」やホンダ<7267>の「N-BOX」の最上位モデルがそうだ。売れ筋商品の価格帯は、年々底上げされてきている。一体なぜなのか。

 我が国は長いデフレで、消費者の購買意欲も低調気味だ。そんな中、普通車よりもコスト安な軽自動車を買い求める人は増えている。現在、国内販売台数の40パーセントを軽自動車が占めている。だが単価の安い商品ばかり売っても、飛躍的な収益のアップは期待できない。そこでメーカーは、この人気の軽自動車に様々な高機能を付加し、売上げを伸ばそうとするわけだ。

 1990年代前半、軽自動車が“自動車未満”の商品であった頃、スズキ<7269>が「ワゴンR」を初めて発売、軽自動車のイメージを一新した。このワゴンRの登場には、90年の軽規格の変更によるものが大きい。最大排気量が550ccから660ccに拡大され、より大きなボディでも充分に動かすことが可能になったのだ。ここからようやく、各社が軽自動車を主力視し、新開発の軌道に乗せるようになった。

 しかし、全長3.4、幅1.48、高さ2.0(各、メートル以下)という法定の枠組みの中で、いかに新しい付加価値を与えていくか。長さと幅にすでに余裕がないとすれば、できることは限られる。車内を「縦に」広くして、より快適で便利なドライブ空間を提供すること。軽自動車は年々、車高が上がり、あるいはエンジンルームを縮め、人や荷物のための空間を大きく確保するボックス型となる傾向が見られる。

 だが居住スペースが広がるほど重量も増し、運転性能が落ちるという欠点もある。そのため、車内は狭いが乗り心地、走り心地のよい従来からの車高の低い車種も、相変わらずの需要がある。スズキのアルトやダイハツのミラ(イース)は、時代に合わせてリニューアルを重ね、今でも人気ラインナップの常連である。

 最近ではさらに、軽規格のスポーツカーと言える、遊び心満載の軽自動車も続々と登場中だ。以前はただ人や物を運ぶ、クルマとしての最低限の機能しかなかった軽自動車が、今や最先端のファッション性を備え、自動車市場を席巻している。

 消費者のニーズの徹底的な追求。不景気の中、我が国のトップ産業として君臨してきた自動車業界としても、今や欠かすことのできないマーケティング視点であると言えそうだ。(編集担当:久保田雄城)