東京都がスポーツイヤーと位置づけ、例年になくスポーツに対して熱の入っている2013年。秋には「スポーツ祭東京」という名前で第68回国民体育大会、いわゆる国体が開催され、今月26日からはその冬季大会がスタートする。また2月24日には、マラソンブームの火付け役ともなった東京マラソンが今年も開催されるなど、スポーツイベントが目白押しの一年となっている。しかし、東京都に力が入る最も大きな理由、それは今年9月に予定されている第125回IOC総会にて、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市が決定することであろう。
東京以外に候補地として残っているのは、スペインのマドリードとトルコのイスタンブールの2都市である。整った競技施設や過去のスポーツ大会開催実績が評価されているマドリードであるが、最大の懸念は財政状況であろう。ジェトロのデータによると、労働市場改革法が昨年2月から施行されているものの雇用状況は改善されておらず、失業率は夏に25%台を突破したという。また外国直接投資統計によると、2012年上半期の対内直接投資は前年同期比65.4%減の53億2100万ユーロ、対外直接投資は11億6600万ユーロの引揚超過となっている。これは、リーマンショック直後に近い水準だという。インフラ・再生可能エネルギー分野におけるスペイン企業の国際入札受注は好調だというが、内需の低迷や欧州債務危機は一向に出口が見えないでいる。
他方、イスタンブールを擁するトルコは、経済状況の好調さが大きな売りであった。トルコ経済は、中東・中央アジア・アフリカ諸国なども対象としており、欧米に偏重していない。そのことが欧州債務危機の影響を最小限にとどめてきたと言える。外国からの投資も依然として旺盛であり、日本企業も積極的に進出をしている地域である。しかし、2012年第2四半期の実質GDP成長率は2.9%、さらに第3四半期は同1.6%と前年同期の8.4%を大きく下回る結果となった。これは、過去12四半期で最低の伸びだという。日本も決して好景気とは言えないだけに、いずれの候補地も経済的に厳しい状況にあると言えるであろう。
オリンピックに伴う経済効果は、その範囲をどう設定するのか次第で大きく異なるが、数千億円から数兆円にものぼるという。いずれの都市・国もこの経済効果が欲しくて立候補していると言えるであろう。東京に限ってみれば、2020年に向けて国立霞が関競技場、海の森水上競技場、夢の島ユース・プラザ・アリーナなど11の恒久施設が整備され、国立代々木競技場、東京体育館、日本武道館など1964年オリンピック大会時の施設を含む15の主要施設を含む主要コミュニティスポーツ施設が改修されるという。また、すでに45億米ドルもの準備金を確保、その経済効果は3兆円にものぼると予測するデータもあり、アシックス<7936>やミズノ<8022>といったスポーツ用品メーカーを筆頭に全日空<9202>やグリー<3632>といった大手企業が招致オフィシャルパートナーに名を連ねている。前回の招致失敗も含め既に多くの税金が投入されており、その回収には大会の招致成功が必須である。一方で実際に東京開催となれば、経済効果の偏重や交通規制などの諸問題も多い。スポーツの持つ可能性や未来云々といった美辞よりも、経済的な計画や予測を実現し得る施策がしっかりと進められるか否かに注目したい。(編集担当:井畑学)