働きたくても働けない、専業主婦世帯12%が「貧困」

2013年01月15日 10:46

  これまで、比較的裕福な層であると思われてきた専業主婦世帯。男女ともに労働環境が厳しくなる中、専業主婦志向の20代女性が増加するなど、専業主婦は「裕福な特権階層」のように思われてきた。

  しかし昨年、その前提を覆すような結果が発表された。労働政策研究・研修機構の調査によると、専業主婦世帯の貧困層は12%に上り、妻が「パート・アルバイト」の世帯より約4ポイント高い。一方、年収が600万円以上の専業主婦世帯も47%おり、専業主婦の間で二極化が進んでいることが分かった。

  貧困ながらも専業主婦でいる子育て女性は、全国で55.6万人に上ると推計される。なぜ彼女たちは働けないのか。大きな理由は「子どもの保育の手だてがない」(51.9%)ことである。次に多いのは「時間について条件の合う仕事がない」で30.8%、「家庭内の問題を抱えている」が9.6%。働こうと思っても子どもを預けられず、また条件の合う仕事が見つからないため、やむなく家にいる「貧困専業主婦」の姿が浮かび上がる。

  90年代後半、『ふざけるな専業主婦』『くたばれ専業主婦』など、働かない専業主婦を叩く本が出版され話題になった。今思えば当時は「専業主婦」を一枚岩のものとして批判できた、ある意味幸福な時代だったとすらいえるだろう。専業主婦といえば裕福、共働きといえば生活苦、といったステレオタイプでは、もはや日本の子育て世帯を語ることはできない。子育て世帯の階層はバラバラに固定化し、それぞれの層が交わることはなく互いにどんな生活をしているのかも分からない。日本は新たな階層社会を迎えているのかもしれない。

  とはいえ、妻がパートやアルバイトとして働きに出ることは、世帯所得を押し上げ貧困層への転落を防ぐことも分かっている。保育所や就労支援などを充実させ、貧困世帯の女性がきちんと収入を得ることができるならば、階層社会の未来も多少は明るい。働くことは多くの女性にとって、自分の手で自分の人生を選ぶための力強い手段になることは明白ではないだろうか。