技術と人材を投下、加速する日系企業のタイ重視戦略

2013年01月19日 20:20

  近年、日系企業によるタイへの進出は、自動車関連産業を中心として1980年代から増加しており、ここ数年、さらに活況となってきた。

  要因としては文化習慣の相違が少なく対日感情が比較的良好である点が大きいと考えられる。また、順調に増加してきた日系企業による産業集積が確立されていること、在留邦人数は3万人を超え、日本人の生活基盤が整っていることも大きい。

  そのような中、ブリヂストン<5108>のグループ会社であるブリヂストン アジアパシフィック ピーティーイー リミテッド(BSAP)は、タイに新たにテクニカルセンターを設立することを決定した。総投資額は約37億円で、2013年7月から業務を開始する予定だ。これにより、従来、日本のテクニカルセンターが担っていたアジア・大洋州地域でのタイヤ開発、タイヤ生産技術、品質経営といった機能を、新テクニカルセンターへ移管することで、同該機能の更なる強化を図り、市場の情報をタイムリーに反映させた研究開発体制を構築。スピードと多様性をもって拡大し続けるアジア市場において、同社グループの技術的支援体制を強化することで、安全、環境、品質をはじめとする品質経営のレベルを向上させると共に、ニーズにあった高品質なタイヤをより迅速に提供することが可能になるものと捉えているようだ。

  また、豊田通商<8015>とセンコーは、タイでの自動車部品、化学品輸送において、品質の高い輸送体制の構築を目的として合弁会社Senko Logistics (Thailand) Co., Ltd.(センコーロジスティクス)を設立した。新会社は豊田通商のタイ現地法人Toyota Tsusho(Thailand) Co., Ltd.(豊田通商タイ)とセンコーが出資し、2012年12月28日に設立、営業は今年1月末から開始し、4月から本格稼働する予定だという。

  さらに、人材派遣大手のパソナグループ<2168>も前述の豊田通商と組んでタイに進出し、日系企業向けに技術者などの派遣・紹介事業を開始するという。豊田通商の現地法人などとの合弁会社を設立し、まずは現地で増産を計画しているトヨタ系列の現地法人や、進出を予定の中小部品メーカーなどの人材確保を支援する。新会社名は「パソナHRコンサルティングタイ」を予定。パソナが49%を出資、豊田通商の現地法人が26%、残りを現地の日系金融機関などが出資する予定となっている。

  日中・日韓関係が不安定な中、今後もタイを主とした東南アジア各国への日系企業の進出が増加していくことが予想される。ASEAN(東南アジア諸国連合)のハブという位置付けを目指すタイにとっても、日系企業の進出は願ったりかなったりの状態だ。昨今は自動車関連事業の進出が目立っているが、今後は他業種企業の動向にも注目していきたい。(編集担当:宮園奈美)