消費者の「こだわり」をとりこぼしてきた百貨店業界

2013年01月20日 15:55

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日本百貨店協会によると、2012年の全国百貨店の合計売上高は6兆1453億円で、既存店ベースでは0.3%増と、16年ぶりに前年を上回った。

  日本百貨店協会によると、2012年の全国百貨店の合計売上高は6兆1453億円で、既存店ベースでは0.3%増と、16年ぶりに前年を上回った。同協会によれば、既存店ベースの年間売上高がプラスとなった背景には、(1)3月の震災反動による大幅増、(2)消費マインドの変化(本物志向、こだわり消費)、(3)都心大型店の増床・改装等大型投資などがあるという。

  「震災後に消費が落ち込んだ反動」は、昨年を通して言われ続けていた。2011年と比べて、昨年は化粧品が2.5%、美術・宝飾・貴金属は3.4%も伸びている。衣料品や身の回り品も好調だった。

  2つ目の「消費マインドの変化」は、長年にわたって指摘されてきたことだ。野村総合研究所によると、「とにかく安くて経済的なものを買う」消費者の割合は、2000年になって急激に高まったが、2003年にはすでに低下している 。今から10年前の2003年には既に、今後は「プレミアム消費」が増えることが予想されていた。

 低価格の商品も買うが、自分が気に入ったものは多少高くても、信頼できる店でじっくり選んで買う。日本人の消費は、少なくとも10年前には「本物志向、こだわり消費」になりつつあったのではないか。2年前の経産省のレポートでも、デフレといわれるが日本の消費者は「低価格」よりも「信頼」「安心」への嗜好性が強いことが指摘されている(経済産業省「消費者購買動向調査」)。

 「気に入った物は、高くても良い店でこだわって買う」という消費者は増えている。それでも百貨店の売上高は、15年連続でマイナスを続けてきた。おそらく百貨店業界は、消費者の「こだわり」を少しずつとりこぼしてきたのではないか。

  昨年11月に増床オープンした阪急うめだ本店は、「劇場型百貨店」をテーマに、業界に新しい風を吹き込もうとしている。消費者のニーズを取り込み、百貨店離れを食い止める起爆剤となるか。2013年の動向が楽しみだ。