今、メキシコが大きな注目を集めている。メキシコといえば、タコスにテキーラ。ポンチョ姿の髭のオヤジがギター片手に歌う、サボテンの国。プロレス好きの人なら、覆面レスラーのイメージを思い浮かべるかもしれない。いずれにしても、日本人のメキシコに対する一般的な認識はその程度ではないだろうか。
しかし今、メキシコの市場、とくに自動車市場が急成長しており、自動車関連企業を中心に、日系企業のメキシコ進出が相次いでいる。調査会社の旭リサーチセンターの調べによると、メキシコの日系企業数は、2011年の464社から、2013年には679社まで増加した。その一番の理由として考えられるのが、世界最大の経済大国である米国への輸出拠点としての絶好の立地であることに加え、日本を含めた世界45カ国を結ぶ自由貿易連携協定(FTA)網、ブラジルよりも安価な労働コストなどが挙げられる。さらに、現在交渉中のTPPが締結されれば、その重要性は加速するだろう。
今年4月には、いよいよトヨタ<7203>もメキシコへの本格進出を表明した。同社が狙うは北米市場。2019年から北米市場向けにカローラを投入するべく、メキシコの中央高地に位置するグアナファト州に年間20万台規模、総投資額約10億ドルを投じて新工場を建設する。
グアナファト州では、すでにマツダやホンダの巨大工場が稼動しており、同州は「メキシコのデトロイト」とも呼ばれるほどの急成長を遂げている。ここにトヨタが加われば、益々競争は激化するだろう。
また、完成車メーカーだけでなく、日系の自動車部品メーカーも約100社以上がメキシコ進出を果たしている。例えば、ブレーキおよびブレーキ用摩擦材の曙ブレーキ<7238>や、トヨタグループの大手自動車部品メーカーであるアイシン精機<7259>、アルミニウム鋳造の専門メーカー・朝日アルミニウム株式会社と業種も多岐にわたる。
中でも、自動車用の防振ゴムなどで世界トップシェアを有する住友理工<5191>は活発な動きをみせている企業の一つだ。同社は12年に自動車用防振ゴム製造子会社TRI Anvis Mexico, S.A.P.I. de C.V.を設立し、メキシコ市場に乗り出しているが、先日、拡大が続くメキシコ市場でのさらなる需要増に対応し新たな生産能力を確保するため、同子会社の第2工場の建設を発表している。
メキシコといえば治安面での不安が取り沙汰されることも多いが、グアナファト州は比較的治安が安定しているといわれている。また、日本企業の進出を背景に、グアナファト州の州都レオンに中央高原6州を管轄する総領事館が開館することが、2015年の政府予算案に盛り込まれ、閣議決定もされた。現地の日系企業にとっては心強いサポートになるとともに、進出を後押しする強力な力になるだろう。(編集担当:藤原伊織)