今や日本の文化であり重要な産業でもあるアニメーション。メディア開発綜研のデータによると、2011年の市場規模は2197億円であるという。最盛期の2009年には2415億円であったことに比べると勢いは衰えているものの、日本の誇るコンテンツと言えるであろう。こうした中、完全中国制作のアニメがテレビ東京系列で放映されるという。
それが、中国のアニメ制作会社カーロンアニメーションが制作した男児向けフルCGアニメ「トレインヒーロー」である。この作品は2010年中国の優秀アニメ制作会社18社に選ばれた中国・常州テレビ系列のアニメ制作会社カーロンアニメーションが、テレビ東京<9413>の協力のもと制作したもの。日本では2013年4月からテレビシリーズを展開、中国ではテレビシリーズをベースに劇場版にスケールアップし、同年公開する予定だという。
完全中国制作のアニメが日本の放送局で放映されるのは異例であり、日中連携の新たなビジネスモデル構築として注目されているというこのアニメに対しタカラトミー<7867>が、他の日本アニメ同様、キャラクター玩具22種を発売する。長年培った鉄道玩具や変形ロボット玩具のノウハウを生かし、新たなキャラクター「トレインヒーロー」の玩具を日本、中国、アジアへと国境を越えた展開を目指すという。初年度の販売目標がシリーズ合計20万個というところに、同社の熱の入り方が窺えるであろう。
日本を抜いて世界一のアニメ生産国になっていると報じられるほど、近年、中国ではアニメ作品の生産量が増加しているという。しかし、オリジナリティやブランド力に乏しい、低品質な作品が多く、大きな課題となっていた。そうした中、2011年に「テレビ東京と中国がアニメーション制作で協力合意」と銘打ってテレビ東京から出されたリリースでは、この「トレインヒーロー」はテレビ東京とカーロンアニメーションと「共同で制作」となっていた。しかし今回タカラトミーが発表した玩具販売のリリースでは「完全中国制作」となっており、テレビ東京は「協力」しただけのようである。さらにこの作品は、2011年時点では2012年の4月からの放映予定であったものが一年の延期となっている。となると、日中関係が悪化していることもあって、どこか邪推したくなる流れと言えるであろう。アニメの内容自体には興味がなくとも、このアニメを巡る動向は注目に値するのではないだろうか。(編集担当:井畑学)