オランダ公営の総合エネルギー事業会社であるEneco社と三菱商事<8058>が、欧州の洋上風力発電事業分野で戦略的提携を行うと発表。Enecoがオランダ沖合に建設予定のルフタダウネン洋上風力発電所の持分の50%を、三菱商事がEnecoより取得し、建設・運転を両社共同で行うという。
ルフタダウネン洋上風力発電所は、東京ディズニーランド の5倍の敷地面積(約25km2)に40本を超す風車を設置。2015年から稼働する予定で、出力は約13万kWとオランダの15万世帯の電力を賄う規模となる。また、両社は現在Enecoが保有・操業中のプリンセス・アマリア洋上風力発電所(12万kW)での協業や、Enecoが業務用の電気自動車を導入する際に三菱商事が側面支援をする事も検討しているという。
日本風力発電協会のデータによると、日本の2012年末現在での風力発電導入実績は、累積で261.4万KW、1887基となっている。しかし、単年度での数字は新設が49基と、2011年度の27基と並び非常に低い数字となっている。2006年度は257基を導入しており、その後も2007年度を除いて100基を超える導入をしていただけに、あまりにも低い数字である。これは、再生可能エネルギーの固定買取制度が開始された一方で、助成制度が廃止されたことなどが要因となっている。風力発電に適する土地が限られてくることや、騒音、天候・気象に左右されやすいなどデメリットもあり、国土の狭い日本では普及には向かない発電方法かもしれない。洋上風力発電に関しても、漁業への影響等、課題は少なくない。こうした中で、豊富な洋上風力発電事業の実績を持つEnecoと提携することは、日本における洋上風力発電の可能性を広げる一歩となり得るであろう。しかし三菱商事による本戦略的提携は、あくまでも欧州におけるものであり、日本における事業は範疇に入っていないようである。企業も国の政策も、風力発電を再生可能エネルギーとして太陽光に次ぐ重要性を持つようなアピールをしていながら、日本にも導入しようという積極性は乏しいと言わざるを得ないのではないだろうか。(編集担当:井畑学)