1+2+3 全国で取り組み進む「6次産業化」

2015年12月24日 08:46

画・1+2+3 全国で取り組み進む「6次産業化」

「収穫体験ツアー」の類いは、一番の代表例だ。地域に滞在してもらうことで経済効果も狙え、受け入れる側も「見てもらえる」ことでモチベーションが高まる効果がある

 JTB関東(埼玉県)と東京農業大学生物産業学部(北海道網走市)が『「食農+観光」による地域活性化』を目的とする包括連携協定を12月15日に締結した。食農分野と観光分野をつなげる人材育成や6次産業化で連携し、地域に還元していくとしている。具体的には、JTBが提供する「旅」に親和性の高い「食と農」を組み合わせたグリーンツーリズムの計画や地元産の農産物を使用した商品・コンテンツの開発コーディネート、その販路づくりなどがあるとされる。

 こうした地域活性化を目指す動きは各地で広がりを見せる。その中でも特に、今回の協定でも登場した「6次産業」という言葉に出会う機会が多い。「6次」とはつまり、農林漁業(1次産業)の従事者が主体となり、加工業(2次産業)、販売・流通・サービス業(3次産業)まで取り込んで事業を行うことを意味している(1+2+3=6)。経営の多角化により農山漁村の雇用確保や所得の向上につながり、ひいては地域の活性化に寄与する、という目的がある。

 例えばビールの原料となるホップを栽培している岩手県遠野市ではことしの夏、「遠野ホップ収穫祭」という飲食イベントを開催した。これには、遠野産ホップでできたビールと地元産の野菜を使った料理を一緒に提供する場を設けることで、2つを一体的に発信するという戦略があった。同時期に「ビアツーリズム」と銘打った1泊2日のホップ収穫体験ツアーも行ったが、こちらにもビールメーカーや生産者との交流人口の拡大を図り、減少するホップ生産者を確保するという狙いがあった。

 また、高知県南国市馬路村では荒れた森林の間にゆずの木を植え、果実の販売の傍らゆずを使用した商品の開発と販売を行っている。年間200万本を売り上げるゆずジュース「ごっくん馬路村」のほか、化粧品や医薬品も販売し、順調に売り上げを伸ばしている。これらの事業が村の雇用の受け皿になっていることは言うまでもない。

 一方で、まだまだ生産者が販売や流通業者の「下請け」となってしまっている現実もある。「6次産業」の大前提は、2次と3次が絡むことで1次産業やその地域が発展するということだ。一過性のブームで終わらせず、継続的な取り組みなることを期待する。(編集担当:久保田雄城)