【今週の展望】マーケットと日銀の間には深くて暗い河がある

2015年12月13日 20:37

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黒田総裁は「市場との対話を重視する」と言うが、マーケットと日銀の気持ちはいつもすれ違い。すきま風が吹き込む関係は、今週の日銀会合で少しは改善するのか?

 今週、12月第3週(12月14~18日)は5日間の取引。週が始まる14日、月曜日の朝に日銀短観が発表される。15~16日にFOMC、17~18日に日銀会合が開かれるという、今年最後の中央銀行イベントウィーク。FOMCの結果は日本時間で17日の午前4時頃、日銀会合の結果は早ければ18日の正午すぎにわかる。FOMCで久々の利上げが決まる可能性は高いとみられているが、日銀会合での追加緩和期待は盛り上がっていない。そんな時こそ「贈り物」を繰り出して効果をあげるチャンスなのだろうが……。

 世界の主要株式市場の休場日は、16日は南アフリカが「和解の日」で休場する。アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃を記念し、白人と有色人種の和解を願う日。もともとは1838年のブラッドリバーの戦いでオランダ系の白人(ボーア人)が黒人部族(ズールー族)に勝利した日で、1880年、そのボーア人の国家が英国に敗れて消滅したボーア戦争が始まった日でもある。第二次ボーア戦争は英国が焦土作戦を実施し強制収容所が開設され、ゲリラ戦も続いたためおびただしい数の非戦闘員の犠牲者を出し、20世紀型の戦争の先駆けだった。

 国内の経済指標、イベントは、3ヵ月ごとの日銀短観、日銀会合が最も重要になる「日銀ウィーク」。最近は、日銀短観の数字が悪いと追加緩和期待が出て株価が上がり、逆に数字が良ければ株価が下がる傾向がある。

 14日は12月調査の日銀短観、11月の首都圏・近畿圏マンション市場動向、10月の鉱工業生産指数確報値・稼働率指数、第三次産業活動指数、16日は11月の訪日外国人客数(大引け後)、17日は11月の貿易統計、18日は11月の日本製半導体製造装置BBレシオ、粗鋼生産量、全国百貨店売上高が、それぞれ発表される。

 15日に日銀短観の企業物価見通しが発表される。17~18日に日銀の金融政策決定会合が開かれる。18日に結果が発表され、大引け後に黒田総裁が記者会見を行う。なお、来年2016年の日銀金融政策決定会合の回数は年14回からFOMC並みの年8回に減る。現在2回ある4月、10月は1回に減り、2、5、8、11月は開かれなくなる。18日は日韓国交正常化50周年。

 主要銘柄の決算発表は年末までは端境期。小売業などの3~11月期決算は年が明けてからがピークになる。

 14日はサンバイオ<4592>、オービス<7827>、TASAKI<7968>、日本テレホン<9425>。15日は神戸物産<3038>、パーク24<4666>、アスクル<2678>、ツルハHD<3391>、稲葉製作所<3421>、イハラケミカル工業<4989>、3Dマトリックス<7777>、アルデプロ<8925>、アークランドサカモト<9842>、くろがねや<9855>。16日は西松屋チェーン<7545>。17日はクスリのアオキ<3398>、クミアイ化学工業<4996>。

 新規IPOは今週は7件もある。来週は8件で、師走恒例の新規上場ラッシュ。

 15日にダブルスタンダード<3925>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で、事業内容は企業向けのビッグデータの生成・提供、データ生成過程で培った技術を活用したサービス企画・システム開発。公開価格は2190円。社名は不公平っぽくてイメージが良くないが、中身はビッグデータ関連銘柄なので人気を呼びそうだ。

 16日にツバキ・ナカシマ<6464>が東証1部に新規上場する。大阪市が本社で、鋼球の製造・販売を行う技術力が売り物の専門メーカー。公開価格は1550円で公募仮条件の上限から10円安かったのが心配の種。もともとの社名は椿本精工で東証1部上場銘柄だったが、2007年5月にMBOで上場廃止になり、8年半たって再上場した。

 17日にミズホメディー<4595>がジャスダックに新規上場する。佐賀県鳥栖市が本社で、体外診断用医薬品の開発・製造・販売を行う。公開価格は1100円。バイオ・医薬品関連銘柄は、山中伸弥氏がノーベル賞を受賞した3年前をピークに人気は薄れているが、初値黒星はまずなさそう。

 同じ17日にオープンドア<3926>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で、総合旅行情報サイト「トラベルコちゃん」を運営するコンテンツ関連銘柄。公開価格は3820円。宿泊予約など旅行情報サイトは乱立気味だが、観光関連は今後有望な市場。

 18日にフリュー<6238>が東証1部に新規上場する。東京が本社で、プリントシール機、クレーンゲーム景品、ネットコンテンツ・メディア、家庭用ゲーム機やスマホ向けゲームの企画、開発、販売、運営を行う。公開価格は3200円。オムロン<6645>からMBOで独立した。「UFOキャッチャー」「プリクラ」から恋愛ゲームまで、創業以来一貫して「女の子」たちとお付き合い。「女子力」「カワイイ」を味方につけて成長している。

 同じ18日にアークン<3927>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で、マルウェア対策、ウィルス対策など情報セキュリティ製品の開発・販売を行う。公開価格は1360円。ISに宣戦布告したはずのハッカー集団「アノニマス」がお門違いの日本を攻撃するような昨今、IT関連の中でもセキュリティは有望分野。

 同じ18日にアートグリーン<3419>が名証セントレックスに新規上場する。東京が本社で、種苗の輸入販売、生花の生産・卸売を行う。公開価格は420円。アベノミクスの農業政策、TPP合意で注目の農業関連銘柄。フラワーなど施設園芸は付加価値が高く、「6次産業化」にもつながりやすい。

 海外の経済指標、イベントは、何と言ってもアメリカのFOMCが最大のイベント。政策金利の引き上げをするか、しないかで、2016年の年初のグローバルな株価、為替レートの見通しが大きく変わってくる。経済指標では住宅着工件数が重要になる。

 14日はユーロ圏の10月の鉱工業生産指数、15日はドイツの12月のZEW景況感指数、英国の12月の消費者物価指数(CPI)、アメリカの11月の消費者物価指数(CPI)、12月のNY連銀製造業景気指数、NAHB住宅市場指数、10月の対米証券投資、16日はアメリカの11月の住宅着工件数、建設許可件数、鉱工業生産指数・設備稼働率、12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、17日はドイツの12月のIFO企業景況感指数、アメリカの7~9月期の経常収支、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、11月のCB景気先行総合指数、18日は中国の11月の主要70都市の新築住宅価格が、それぞれ発表される。

 15~16日にアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれ、16日に結果が発表される。今回はイエレンFRB議長の記者会見があり、2016年の経済見通しを発表する。16日にタイ、17日にインドネシアとメキシコで政策金利の発表がある。17~18日にブリュッセルでEU 首脳会議が開かれる。17日にロシアのプーチン大統領の年次記者会見がある。18日に人気映画シリーズ「スター・ウォーズ」最新作「フォースの覚醒」が世界同時公開。アメリカにとって重要な輸出産業、エンタメ産業にフォースの守りあれ。20日はスペインの総選挙の投・開票日。

 アメリカ主要企業の決算は16日にオラクル、18日にレナーが発表する予定。

 安倍内閣の「三本の矢」の経済政策とともにアベノミクス相場の株価上昇の原動力になった日銀の「異次元緩和」「黒田バズーカ砲」という言葉も、呼ばれ始めて2年半が経過し、けっこう色あせてしまった。黒田東彦氏が日銀総裁に就任したばかりの2013年4月4日に発表された追加緩和第1弾では、J-REIT(不動産投資信託)の買入枠を3倍の年間300億円に、ETF(上場投資信託)の買入枠を2倍の年間1兆円に拡大した。その頃の株式市場は、政策の効果はまだ乏しく、そこには可能性しかなくても期待感がいっぱいで、空は高くてまぶしい「アベノミクスの青春」だった。それから1年半後、2014年10月31日の追加緩和第2弾で、J-REITの買入枠は900億円に、ETFの買入枠は年間3兆円に拡大。ともに「3倍」という大盤振る舞いの「突然の贈り物」に、世界がアッと驚いた。

 しかし、その年間買入枠の2015年分は、すでにそのほとんどを使い切ってしまった。J-REITはすでに予算の900億円をオーバーし、ETFの予算3兆円の残り枠はわずか40億円程度しかない。今年の営業日は30日の大納会まで、まだ12日もある。