一般社団法人ペットフード協会が今年1月に発表した犬猫飼育実態調査によれば、犬と猫の推計飼育頭数は全国で1979万1000頭だという。人間と同じように生活習慣病などのペットの病気罹患率が上昇している。少しでも健康で長くパートナーでいてほしい。そんな飼い主の思いは、企業の研究開発分野にも届いたようだ。
富士フイルム<4901>とペット保険のアニコム<8715>は2015年12月、動物の先端医療技術の研究開発で業務提携した。早速16年春に合弁会社を設立する予定だという。出資比率は富士フイルムが51%、アニコムが49%となっている。
合弁会社では、再生医療を中心とした研究開発をはじめ、得られた研究データを診療行為に活用できるよう、情報を構築していくという。富士フイルムが再生医療用材料や画像診断システムなどの医療機器を、アニコムは電子カルテシステムを提供し、両社の得意分野の知恵を出し合う形の新会社となるようだ。
特に注目されるのは再生医療の動物への応用だろう。この点、富士フイルムは再生医療の要、細胞増殖の足がかりとなる人工タンパク質、リコンビナントペプチドを開発しており、研究開発に大きな寄与が期待できる。
一方、アニコムは同時に先端医療普及を見越したペット保険の開発も行っていくという。
ペットの寿命は年々伸びており、犬の平均寿命は14.85歳、猫(屋内飼い)は16.40歳となっている。以前から言われていた「ペットの寿命は大体10年程度」からかなり伸びていることがわかる。矢野経済研究所の14年度調査では、ペット保険や動物病院関連が市場拡大に大きな影響を与えているとの結果が出ており、ペットの長寿化は、ペット業界全体の市場規模をさらに拡大させていく可能性があるだろう。
ペットも生き物である以上、飼い主は生死の問題に直面せざるを得ない。その時、大切なパートナーに、なるべく多くの選択肢を与えてやりたいという飼い主の願いは、そのまま人間に対するものと同じになる。
ペット市場の現況を眺めると、人は大切に思っているパートナーに、時間も費用も惜しまないのだということを改めて認識させられる。(編集担当:久保田雄城)