今年も花粉の季節がやってくる。日本気象協会の発表によると、2016年のヒノキ、スギ花粉のピークは3月上旬から中旬にかけて、最も多くなりそうだ。
日本で最初に花粉症が確認されたのは、今から55年前のブタクサ花粉症患者。日本人が最も多くかかっているといわれるスギ花粉症患者は、それより3年後の1964年に最初の発見報告がある。その後約50年間で爆発的に患者数が増え、今や国民の20%以上が患っているともいわれる国民病となってしまった。また、近年では、これまで花粉症にはかかりにくいと言われていた14歳以下の子どもたちの罹患率も急激に増えており、社会問題となりつつある。
しかも、花粉症は個人の問題だけでは収まらない。
花粉症患者にかかる国の年間医療費の負担額はおよそ2800億円以上、労働損失は年間約650億円と推計されており、国家的にも大きな経済損失となっているのだ。この状態を、医薬品メーカーはもとより食品メーカーなども見逃すはずはない。花粉症に関する研究も進み様々な成分が花粉症対策として注目を浴びている。
例えば、紫蘇(しそ)に含まれるルテオリンやロスマリンサンといったポリフェノールには、強い抗酸化作用とアレルギーの抑制効果があるとされ、注目が高まっている。とはいえ、日常的に紫蘇を食べるのも難しいうえに、調理法を間違えるとせっかくの栄養素も台無しになってしまうことから、DHCやファンケル<4921>などのメーカーが販売している、紫蘇入りのサプリメントに人気が集まっているようだ。
また、緑茶が花粉症対策になることはお茶の産地では常識的に知られている。緑茶だけでなく、最近では、日本古来の「べにほまれ」と中国系「ダージリン」を交配して作られた紅茶用の「紅富貴(べにふうき)」に、ヒスタミンの抑制効果の高いメチル化カテキンが多く含まれていることがわかり、鹿児島県産のべにふうき粉末や、アサヒ飲料株式会社<2502>が販売しているペットボトル入りの「べにふうき緑茶」などが、ネット通販を中心に売り上げを伸ばしているようだ。
そしてハチミツをはじめ、様々なミツバチ産品の製造販売で知られる株式会社山田養蜂場は、この度、鳥取大学医学部との共同研究で、ブラジル産プロポリスを予防的に継続摂取することで、花粉症の発症を遅らせ、鼻をつまりにくくすることを確認したという。
プロポリスはミツバチが様々な植物の新芽や樹脂に、花粉やミツバチ自身の分泌物である蜂ろうや唾液などを混合して作る天然物質だ。アルテピリンCなどの桂皮酸誘導体やフラボノイドを豊富に含有し、これまでにも優れた抗酸化作用や抗腫瘍作用などが報告されているが、花粉症への効果はあまり知られていなかった。
また、この試験では花粉症治療薬の使用頻度や強さを8分の1程度まで抑えられることも確認されており、健康的に花粉症対策を行える、新たなアプローチとしての期待が高まっている。
緑茶や紫蘇、プロポリス。花粉症に有効といわれるものを並べてみると、人工的なものではなく、世の中に昔から普通に存在している天然由来の食品ばかりだということに気付く。文明がいくら発達しても、人の健康を守ってくれるものは薬ではなく、質の良い食品なのかもしれない。(編集担当:石井絢子)