もしかして自分も? 大人でも気付きにくい「アスペルガー症候群」

2016年03月17日 12:42

画・もしかして自分も? 大人でも気付きにくい「アスペルガー症候群」

ASDの特徴には、複数のことを同時にできない、ひとつのことに集中すると周りが見えなくなる、コミュニケーションが苦手…など、普通の人でも悩みがちなものが並ぶ。

 社会生活で必要なコミュニケーション力、想像力、社会性の3つに障害があるとされる自閉症スペクトラム障害(ASD)。先天的な脳機能不全による発達障害だ。その有病率は1000人に7人とも100人に2人とも言われており、専門家や調査の仕方によって大きく異なるまだまだ全容が解明されていない病だ。その中でも言語や知能の発達に目立った遅れがないものがアスペルガー症候群(AS)で、その特徴から大人になってから診断される人も多い。

 具体的な特徴としては、「言葉を文字の意味通りに受け取る」「相手の気持ちを想像できない」「音や匂いに敏感」「興味の幅が狭く、こだわりが強い」などがある。例えば「また今度」と社交辞令を言われたときに、「今度」がいつか気になって何度も聞いてしまったり、「お皿を洗って」と頼まれたときにシンクの中の茶わんや箸を残してお皿だけ洗ったり、といった行動をとってしまう。

 しかしこれらの症状も「空気が読めない」や「マイペース」だけで片づけられてしまうため、大人になるまで本人や周りに自覚がないケースが多いのだ。その一方で、本人は劣等感や自己否定感を覚えて人知れず悩んでしまい、場合によってはうつ症状になってしまうこともある。そのまま適切なケアを受けられないとうつ病を悪化させたり、詐欺などの被害に遭ったりすることもあるという。

 では、周りの人にAS の疑いがある人がいた場合、どうすればいいのか。臨床精神医学の専門家は「仕事がうまくいかないからといって、すぐに発達障害のレッテルを貼るのは危険」としているが、上司や同僚のすすめで受診する人もいるという。仕事のミスの原因が病気にあったと知り「救われた」という患者もいるそうだ。ASの人は技術職や研究職に向いているとされ、診断を元に適職に就いて彼らが生き生きと働くことができれば、会社にとってもプラスになるだろう。

 「自分がASかもしれない」と思った場合は、病院のホームページなどで簡単にできるセルフチェックを試してみるといいだろう。その上で、各県にある発達障害者支援センターに相談するのがおすすめだ。通常の精神科では専門外であることが多く、適切な処置をされないリスクがあるからだ。

 専門家は「発達障害は特別なものではなく、誰もが多かれ少なかれ同じ特性を持っている」とし、「その特性が顕著で、生活に支障をきたせば医学的に発達障害と認められるというだけ」と、全ての人にとって身近な障害であることを強調している。 (編集担当:久保田雄城)