ホルモン剤の点鼻スプレーでコミュニケーション障害が改善へ

2015年02月01日 09:14

 100人に1人はいるといわれいている「自閉症スペクトラム障害」。主な症状は、表情などから相手の感情を読み取ることが困難な、対人コミュニケーション障害として現れる。代表的な発達障害の1つであるが、原因は確立されておらず、治療法も確立していない。このほど東京大学の研究グループは、ホルモンの一種であるオキシトシンを点鼻スプレーで吸入させることによって、コミュニケーションに関わる脳の部分の機能改善につながることを世界で初めて実証した。研究成果は、自閉症の新たな治療法確立につながることが期待される。

 東京大学大学院医学系研究科の山末英典氏、渡部喬光氏らのグループが解明した。

 知能や言語能力は高いものの、他者の意図を読み取ることが苦手なため、社会生活への適応が難しくなってしまう自閉症スペクトラム障害。この障害を持つ人は、脳の内側前頭前野と呼ばれる部分が機能低下することを、すでに研究グループは突き止めている。

 今回の研究では、新たに自閉症スペクトラムの患者に対して、オキシトシンの点鼻スプレーによって脳の該当部位が活性化するかどうかを検証した。

 障害を持つ成人男性40人を対象に、精度の高い試験方法である二重盲検を用いて検証したところ、低下していた部分の脳部位の活動が活性化され、コミュニケーション障害が有意に改善されることを証明した。

 具体的には、点鼻スプレーを1回投与することによって、1)表情や声色を活用して相手の友好度を判断する行動が増加、2)前頭前野の活動が回復、3)行動上の改善と脳活動の改善が、相互に関与――などを証明した。

 研究グループはすでに、今回の研究成果を活用して、オキシトシンの点鼻スプレー製剤を用いた、対人コミュニケーション障害の治療法開発に着手している。点鼻スプレーによる障害の改善が、日常生活においても有効かを確かめたうえで、臨床試験の規模拡大などに取り組んでいく方針だ。(編集担当:横井楓)