認知症向けロボットの活躍 暴力等の問題行動が減少

2016年01月22日 08:27

 岡山市は、2014年1月から国内初の「介護機器貸与モデル事業」を実施。介護機器制度で給付対象外の6機器を介護保険と同様に1割に軽減し、貸与する。中間発表によると、認知症のコミュニケーション力や問題行動の改善を目的とする「パロ」「うなずきかぼちゃん」に一定の効果が確認された。

 パロは、ギネスブックにも認定されている「世界でもっともセラピー効果があるロボット」だ。タテゴトアザラシの赤ちゃんを模したデザインで、センサーや人工知能によって人間の呼びかけに反応する。抱きかかえると喜ぶアクションを見せるなど、人間の五感を刺激する豊かな感情表現が特徴。アメリカでは食品医薬局(FDA)により、医療機器として承認され、多くの医療施設や介護福祉施設などで活躍している。認知症高齢者だけでなく、自閉症の子ども達などのセラピーにも効果が確認され、日本でも介護福祉分野で導入が進んでいる。

 岡山市によるとパロは14年2月?15年3月、徘徊や暴力などの認知症の問題行動の頻度を数値化する利用者の「認知症行動障害尺度」を調査したところ、平均23.2点から14ヵ月後には3.2点にまで改善が見られた。

 うなずきかぼちゃんは、季節や時間に合わせたおしゃべりや季節の歌をうたい、コミュニケーションを沢山とるほど言葉が増え、歌を長く歌えるようになる。14年11月?15年6月の調査で平均7ポイントの改善が確認された。

 他の4機器についても好評のようだ。離れた場所から要介護者が寝ているかどうか確認できる「おだやかタイム」や、体位変換の際に使用する腰部サポートウエア「ラクエニ」などがある。

 しかし、成果を上げている一方で、利用者数が伸び悩んでいる。うなずきかぼちゃんは約100人、パロは約50人、他の機器も各1?40人ほどだ。

 厚生労働省の発表では、20年には認知症を有する高齢者の人口が325万人まで増加するという。その割合は8.9%と予想されているが、すでに10%に達しているという意見もある。介護機器のさらなる普及と性能の向上を期待したい。(編集担当:久保田雄城)