パネルディスカッションに登壇した委員長の髙田光雄教授(写真左端)。以下、研究委員の大久保恭子・株式会社風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし株式会社代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院学術研究員
アキュラホーム住生活研究所は昨年に引き続き、東京・文京区の「すまい・るホール」で「第2回 住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会シンポジウム」を3月1日に開催した。生き方の多様性を捉え、これからの家族と住まいのあり方を考える会だ。
今回のテーマは「変わる女性と住まい」とし、京都大学大学院の髙田光雄教授・委員長以下6名の委員が登壇し、講演ならびにパネルディスカッションを行なった。
委員長は前述の髙田光雄教授、研究委員は大久保恭子・株式会社風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし株式会社代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院学術研究員の計6名。
初めに髙田委員長が、「家を語る時に、それは男の家か女の家か?ということが、古今東西、議論となることが多いが、今回のテーマは伝統的な住まいにおける男と女の問題ではなく、むしろ日本の近代化の中で男と女が住まいとどう関わり変容していったのかを踏まえ、未来への展望を明らかにしたい」と述べ、「戦後は郊外の庭付き一戸建ての取得が家についての目標となって、それに合わせて近代化が推進された。その中でも(主婦の)家事労働の軽減が大きなテーマとなった。つまり戦後の家は女の家であったが、その後、家族のあり方自体が大きく変化し、少子高齢化もあり、新しい価値観で住まいを考えるべき時が到来している。それは例えばコレクティブハウスやシェアハウスなども視野に入れることであり、住まいと街の新しい関係性についても考察が必要とされるだろう」とコメントがあった。
これを受ける形で、山本委員らの講演が行われた。家事労働の軽減は実現したが、それはよくいわれるような家電製品の急激な普及が主な原因ではなく、実は裁縫時間の減少、つまり和装から洋装への変化が大きな要因であることを明らかにしたり、今後は夫と妻の長時間労働を支えていく仕組み、特に働く女性のための住まいの構築が必要であると同委員は社会学者の立場から考えを披露した。
休憩を挟み、その後のパネルディスカッションでは、「近代社会の限界が到来している」「家事を手伝わないと女は子供を産んでくれないことに意識の高い男は気づき始めた」「血縁家族に多くを求めた結果家族が崩壊した」「一家族一住宅という考えは解体すべき」など刺激的な言葉や、「互助と近居がキーワード」「暮らしが大きく変化するときは、住まいも変わる」「住まい方の変化に家も対応できるように」「高齢者住宅を考えることがすべての住宅の課題を解決することになる」など示唆に富んだ発言が行き交った。
簡単にまとめられるようなトピックではないが、女性が働きながら子育てできる環境や高齢の女性のひとり住まいを考えていくこと、住まいにキャパシティ・余白とでも呼べるスペースを作ることなどが、これからの女性にとっての住まいに求められるとことであるように筆者には思われた。
最後にジャーブネット主宰でアキュラホーム社長である宮沢俊哉氏が、「あるべき住まいとは、あるべき作り手とは? と常に自問しながら、住まい手・匠の技を持った職人・有識者などの声や、本日のような有意義な意見を真摯に受け入れ、それらを住まいに組み入れて、真の意味で豊かな社会を作っていくお手伝いをこれからも続けていきたい」と挨拶しシンポジウムは締めくくられた。(編集担当:久保田雄城)