すでに東京都の単身世帯の70%が“高齢女性単身世帯”、2030年の全国世帯の4割が65歳以上。その時、住宅は?

2015年04月04日 18:27

JAHBnet

シンポジウムのトークセッションに登壇した委員長の髙田光雄教授(写真左端)。以下、研究委員の大久保恭子・株式会社風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし株式会社代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院学術研究員

 アキュラホームは昨年6月、創業35周年を迎えたのを機に、住まいと暮らしに関する調査研究を行なう「アキュラホーム住生活研究所」を企業内研究所として設立した。

 同研究所では、住環境について大学などとの共同研究を実施。単に住宅を供給するだけでなく、住む人が“豊かさを感じながら末永く暮らしていくことが重要だ”との考えに基づき設立した研究所だ。同時に、つくり手、住まい手双方の立場から「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会」の運営を行なっている。

 これらの活動から得られた成果として、第1回のシンポジウム・セミナーを3月30日に東京・文京区の「すまい・るホール」で開催した。

 シンポジウム開催や研究レポートなどを通じて研究成果を広く公開する1年目の成果報告会である。第1回のテーマは「変わる家族と住まい」とし、京都大学大学院の高田光雄教授・委員長以下6名の委員が登壇し、講演ならびにパネルディスカッションを行なった。

 研究会・委員長は前述のとおり髙田光雄教授、研究委員は大久保恭子・株式会社風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし株式会社代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院学術研究員の計6名。

 同研究会は、髙田委員長以下、住宅の価値が新築時の価値を上回ることができるような仕組みと文化の構築を目指し研究しているが、今回のシンポジウムでは、高齢者単身世帯の増加など世帯の形の変化が住宅産業に及ぼす影響を掘り下げた。

 シンポジウムの冒頭で髙田委員長が、現在急速に進む「少子高齢化」という言葉でシンポジウムの主題を述べた。日本社会の高齢化は、「一人ひとりの人生が長い社会で、末子が学卒して以降の人生が長い社会」になったと述べ、「65歳以降のライフストーリーを自己決定する社会の到来」だと定義した。さらに日本のような高齢社会では「生活単位の個人化が進み、最もポピュラーな世帯のスタイルが“単身世帯”となる」とも。

 これを受けて各委員の解説やトークセッションは、晩婚・非婚、長寿化による人の“単身期間”の長期化の影響で、戦後の20世紀の住宅供給である「nLDK」型の住宅供給では対応できない時代が到来したとした。報告では2030年の全国世帯の4割が65歳以上の世帯主となるもようで、一人住まいや二人世帯が中心となる。事実、委員の報告ではすでに東京都の単身世帯の70%が“高齢女性単身世帯”だという。

 日本全体としてリタイヤ後の人生が戦後間もない1950年代の3倍に伸びている。人生後半が長期化しているのだ。それら高齢単身世帯の求める“住まい”とはどのような形態なのか、考察する必要があるという意見で共通していた。多くの委員は、例のない急速な高齢化で世界に“お手本が無い”のだが、変わる(単身になる)ライフシーンに合わせて住宅を変えるのが理想としながら、まだ抜本的な理想の単身住宅は見出せていないという。

 しかしながら、シンポジウム後半で「個々に価値観を持ちながら、個々の価値観の違いを容認しながら生活して1200年の時を経てきた京都の町屋コミュニティにヒントがありそうだ」とする発言が多数となった。単身者住居が増えても、京都町屋コミュニティは「見て見ぬふりをする、聞かぬふりをするのも巧い。が、言った方がいいことは言う」とした発言が、“何か核心を衝いて”いると思えた。

 最後に登壇して「高齢化社会の到来は以前から分かっていたこと。が、我々も含めて “老い”を本当の意味で直視していなかった。今後、高齢単身者が求める住まいづくりの研究を……」とジャーブネット主宰・アキュラホーム社長の宮沢俊哉氏がシンポジウムを結んだ。(編集担当:吉田恒)