「終の棲家」を追い続ける高齢者たち

2016年02月11日 09:32

画像・65歳以上の15%が認知症 徘徊に疲弊する家族に社会はどう対応するのか

60歳以上のほぼ半分が、これから住居を替える可能性があることが、NPO法人の調べで分かった。介護の不安や家屋の不便さに悩む人々の姿が浮き彫りになった。

 60歳以上のほぼ半分が、これから住居を替える可能性があることが、NPO法人の調べで分かった。介護の不安や家屋の不便さに悩む人々の姿が浮き彫りになった。

 調査したのは、高齢期のライフスタイルの充実について調査・研究する「老いの工学研究所」(大阪市)。昨年12月に、「高齢期の住まいと住み替えに関する調査」をモニター会員に郵送で行い、60~91 歳までの317人から回答を得た。

 「現在の住まいを終の棲家にする予定か」という質問に対する答えを男女別にみると、「終の棲家にするつもりだ」と答えた男性は58%、女性は45%だった。逆に、住み替えを検討している人の割合(「住み替えるつもりだ」「終の棲家にするのは難しい」の合計)は、男性で 21%、女性で24%。さらに、同研究所では「分からない」とした人を合わせて男性42%、女性55%が「住み替え予備軍」であるとみている。

 住み替えの意向に対する回答を年代別で見ると、「住み替え予備軍」は60歳代で49%だったが、70歳代では41%、80歳以上は25%となり、年齢が上がるごとにその割合が減った。しかし、80歳を超えても4人に1人が引っ越しの可能性を否定できないということは高齢者の住まいのあり方の奥深さを表している。

 また、「住み替えるつもりだ」「終の棲家にするのは難しい」と答えた人に、複数回答で理由を聞いたところ、最も多かったのは「介護状態になったら面倒をみてくれる人がいない」の35%で、「家や庭が広すぎて掃除や管理が大変」(34%)、「事故や病気の際に気付いてくれる人がいない」(28%)が続き、「子供や親族に心配や迷惑をかけたくない」も20%あった。

 家族構成別に見ると、子・孫と一緒に住む「三世代同居の高齢者」の 92%が「終の棲 家にするつもり」と答えた。一方で、1人暮らしでは60%にとどまり、一番低いのが「夫婦と子」世帯の50%だった。

 高齢者はどこへ引っ越すのか。別居中の子供たちの家ということもあるだろうし、サービス付き高齢者住宅や住居型有料老人ホームも有力な候補だろう。同研究所では、「現在の『郊外・持ち家・広い一戸建て』から、『便利な立地、ちょうどよい広さ』の住まいを求めている感じがする。施設は、元気なうちは嫌がって想定していない人が多い。しかし現状では、要介護状態になってから子供に勧められて仕方なしに入所する人が多いので、長い高齢期を楽しむために、早めに住み替えることを検討する人々が増えればと思う」と話している。一方で、三世代同居世帯の9割のおじいちゃん、おばあちゃんが「今の家に住み続けたい」と思っているという数字はきわめて示唆的である。(編集担当:城西泰)